見知らぬ医師のレビュー・感想・評価
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重く冷たい戦慄
貧しくも楽しそうな一家が、見知らぬ医師と出会ったことから、恐ろしい運命に引きずり込まれることになる。
映画は最初から最後まで冷たく重い。舞台が南米なのに一家の母親がドイツ語を話せるのは、子供のころにドイツ語学校に通っていたからで、その思い出話をするときに見せる当時の写真には鉤十字の旗が映っている。この時点で、彼らが出会ったドイツ人医師の素性はそれとなく提示されたも同然なのだが、そのことが分かってからのほうが俄然サスペンスが高まる。
この美しい景色の中で、平和な一家をどのような恐ろしい出来事が襲うのか。
その医師が行う「治療」の場面はおぞましいものではない。しかし、娘想いの父親が作る人形には心臓を入れる蓋がついていて、リアリティの追及と医師の出資のおかげで工場での大量生産に漕ぎつける。
映画の中で最もショッキングな映像はこの人形工場のであろう。体のパーツごとに同じものがいくつも並ぶ光景は、人体をモノとしか見ていない狂気を想起させる。熱湯の中からズラリ並んだ脚や腕が出てくるシーンは吐き気すら催すほどだ。
しかし、それでも映画のトーンは重く、陰鬱で、決して派手な演出は出てこないのだ。ペースを乱すことなく、淡々とサスペンスを増大させていく手腕がなかなかだ。
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