「対立組織の描き方のバランスが良かったです。」ザ・イースト Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)
対立組織の描き方のバランスが良かったです。
決して派手ではないですが面白かった。
本作では文明社会の一員として一般的な感覚を持つジェーンを基軸に、
営利目的組織の暴走と、対抗するテロ組織の暴走を描いています。
設定が一見荒唐無稽なようですが、実は殆どのネタが実際に起きていること。
意外と世界が行くところまで行ってしまっていることに愕然とします。
両者が共に極端であるため、作中ではどちらか片方に肩入れしにくい状況。
そのバランスが素晴らしく両者の思想や信念を考える切欠になりました。
イイ感じでモヤモヤする作りになっている点が秀逸。
また営利目的組織の中にジェーンが属する民間の対テロ警備企業も含まれており。
作中に登場する上司の言動がジェーンを揺り動かす重要な役割を果たしていました。
そういう意味では上司役のパトリシア・クラークソンが良い働きをしてました。
特に印象的だったのは序盤の食事シーン。
環境テロリスト集団「イースト」に潜入直後のジェーンが最初に直面する彼等の思想。
問いかけから彼等の答えまでのテンポや間が絶妙で、ジェーン同様に衝撃を受けたシーンでした。
絵面のインパクトも強かったですが、同時に彼等の宗教的な側面も現れている巧い場面でした。
またラストのジェーンの決断も印象的。
彼女自身の経験から導き出された決断は印象的であり納得感もありました。
作品を通してジェーンの変わったところ、変わらなかったところ。
そして結論を踏まえて改めてみる営利目的組織とテロ組織「イースト」。
鑑賞後、そういった観点で思い返してみると味わい深いものがありました。
決断後のエンディングロールと共に差し込まれる映像も良かった。
全体的にバランス感覚が良かった本作。
部分部分でご都合主義的な展開があるものの、全体的に楽しめて考えさせられる作品だと思います。
オススメです。