「後半からの失速はあるけど、楽しめた」渇き。 といぼさんの映画レビュー(感想・評価)
後半からの失速はあるけど、楽しめた
賛否両論あるけど個人的に結構好きな監督でもある中島哲也監督の作品ということで、今更ながら鑑賞いたしました。中島監督作品では「告白」「来る」に続いて三作品目です。
テレビCMの監督出身だからか良くも悪くも印象に残るような派手で独特な演出が多く、正直観る人を選ぶ監督であるというのはよく言われますね。「告白」でも突然ミュージカル調になったり、「来る」ではラストの大迫力の霊能力者と幽霊の除霊バトルシーンなどが印象的です。私は結構好きなのですが、そういった演出が鼻につくという人の気持ちも分からなくもないです。
この作品の総評ですが、「面白かったけど後半につれて失速していった」という感じです。
失踪した娘を探す父親の話なのですが、鑑賞前は「段々と娘の裏の顔が見えてくる展開かな」と思っていたのに、実際のところ、娘が裏でやばいことをやってるというのは物語の結構序盤で判明しますし、事件の詳細が後半に連れて判明していきますが、ぶっちゃけそこには驚きも無ければ感動もありません。賛否あるラストシーンは個人的には悪くなかったと思います。失踪した娘に踊らされる父を描いた映画のラストとしては十分に納得感のある展開でした。
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妻の浮気が原因で離婚して仕事も失った元警察官である藤島昭和(役所広司)は、ある日元妻である桐子(黒沢あすか)から娘の加奈子(小松菜奈)が失踪したという連絡を受ける。加奈子の部屋から薬物が出てきたため警察に通報することもできず、昭和は独自に調査を始めることとなった。
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元警察官である昭和が失踪した娘を追う現代の話と、加奈子に思いを寄せていた少年が加奈子に近づき裏の世界に足を踏み入れるという三年前の話が交互に展開され、加奈子の本性が明らかになっていくという展開です。
2つの時系列の異なる話が交互に展開されるという映画は数多くあります。私が鑑賞した映画で言えば、「アヒルと鴨のコインロッカー」「ソーシャルネットワーク」などがそれに当たると思います。
最初は全くつながりの無い話に思えた2つの時系列が、ある時に交わる。そこにカタルシスや快感を感じる作品の構成ですね。
この作品は現在と3年前という2つの時系列が描かれてはいますが、その2つの物語がほとんど交わることが無いです。ほぼ単独の物語として進行していくので、時系列を分けたことによる面白さみたいなものが正直感じられませんでした。
ストーリーも、原作が名高い賞を取ったということで「原作小説は面白いんだろうな」とは思いますが、映画は「面白い」とは素直に感じられませんでした。これは個人の好き嫌いもあるでしょうが。役者陣の演技も、中島監督の演技指導だとは思いますが、わざとらしいオーバーな演技が多く、私は鼻についてしまいました。
上記のような批判的なポイントはありつつも、「つまらない」と断じてしまうには勿体無い作品のようにも感じます。
人間の闇の部分が垣間見える役者陣の演技や脚本。失踪してしまった娘によって狂わされていく父親の描写は見事だったと思います。良くない部分もありつつも、素晴らしい部分も持ち合わせた作品ですので、色んな方に試しに鑑賞していただきたいです。オススメです。