「現在でも根強く残る人種間での対立。人間の意識の暗部に真っ向から立ち向かう若き監督の姿勢に感銘を受けた。」フルートベール駅で たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
現在でも根強く残る人種間での対立。人間の意識の暗部に真っ向から立ち向かう若き監督の姿勢に感銘を受けた。
2009年に発生した「オスカー・グラント射殺事件」を映画化。
ある黒人青年の人生最期の1日を描いたヒューマン・ドラマ。
監督/脚本はライアン・クーグラー。本作は彼の長編デビュー作である。
主人公オスカー・グラントを演じるのは『陽だまりのグラウンド』『クロニクル』のマイケル・B・ジョーダン。
オスカーの母親、ワンダ・ジョンソンを演じるのは『マルコヴィッチの穴』『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』の、オスカー女優オクタヴィア・スペンサー。
製作を担当するのは『プラトーン』『パニック・ルーム』の、レジェンド俳優ウォレスト・ウィテカー。
第29回 インディペンデント・スピリット賞において新人作品賞を受賞!
第29回 サンダンス映画祭において、ドラマ部門のグランプリと観客賞を受賞!✨
鑑賞後に、自分の中の何かが少しだけ、しかし確実に変化する映画というものが誰にでもあると思うのです。
自分にとってはまさにこの作品がそうでした。
2009年1月1日。人生のどん底にいる青年が、自らの過去の過ちを悔いて改心することを決意する。彼女や愛娘、家族や友人の愛に包まれて青年の人生が変わろうとしている。
その様子が淡々と描かれる程、クライマックスに起こる悲劇がより強烈なものとして胸に迫る。
事件の内容はショッキング。題材が題材なだけに、当然人種差別への強烈なNOが訴えられている。しかし、この映画の主題は黒人差別を追及したり、わずか11ヶ月の懲役で済んだ判決の是非を問うたりするものではない。
人生の一分一秒の尊さや、周囲の人間を愛することの素晴らしさ。過去ではなく未来に向けて歩むことへのエール。
そういったポジティブなメッセージを観客に送ってくれる本当に素晴らしい一作でした。
高圧的な警官も、ただの差別主義者としてではなく、職務を果たす上で興奮状況になってしまった人間として描かれており、そのあたりのバランスも非常に良かった。
監督のライアン・クーグラーは本作が長編デビュー作。若干27歳でこの作品を作り上げている。
『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)を鑑賞して彼のファンになったのだが、本作もやはり素晴らしかった。
観た人を奮い立たせる様な、至極真っ当な作品を生み出し続けてくれる監督に敬服します。