2つ目の窓のレビュー・感想・評価
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大自然の前の生(性)と死
まずは、やはり奄美大島が舞台だけに美しい海とそこで交わる島民の温かさを感じられ、実際に島に行きたくなる気分を味わった。
そんな島で、海を愛する少女と海を愛せない少年が互いに惹かれ合う背景に、「自然と生きるとは何か」、「死とは何か」という哲学的なテーゼが交わる。さらに、少女にとっての「性」と少年にとっての「性」がすれ違う中で、ラストにその「性」が美しい海で結びつく。
自然の音がこの作品では特に印象的で、風や波の音がまるで島の「神」の動きに連動しているかのように感じた。
予備知識なしで見たが、やはり河瀬監督の作品を知った上で見たほうが理解しやすい、やや硬派な作品である。
世界観のむき出し
初めて奄美大島に旅をする前日に観ました。このレビューは奄美で書いています。
冒頭シーンでテーマ設定がされます。命のつながり、輪廻転生、島の宗教と人との関わり、家族、性、思春期の葛藤、恋を奄美に生きる人たちの日常を通して静かに描いています。
河瀬監督の世界観は出ていますが、独自の世界が表現できているとは感じませんでした。登場人物は全員が善人で、環境から想定される範囲内で善い人たちが賢く会話し議論し衝突し、日常の物語が進んで行く。
映画で普通の人たちの日常を見るのは退屈です。想像の世界では日常にリアリティを感じないのです。
ぼくが映画で見たいのは監督の世界観そのものではなく、それをベースに描き出した非日常の世界や物語です。前の週にホドロフスキー監督の『リアリティのダンス』を観ましたが、それと比べると世界を描く主観の強さの違いが対照的でした。
ただ、主人公のふたりが海を全裸で泳ぐシーンは幻想的で象徴的で美しかった。
こうして命はつながっていく。豊かな生命の物語。
【賛否両論チェック】
賛:奄美大島の人々の死生観が随所に表れていて、己の生き方について改めて考えさせられる。
否:伝えたいであろう内容がどれも中途半端で、結局何を伝えたいのかがよく分からない印象。ヤギのと殺シーンや過激なラブシーンもあり。
思春期の微妙に揺れ動く感情や、死を目前にした人間の在り方、命を受け継いで生きていくことなど、奄美大島で織り成される「生命」をテーマにしたストーリーに、心揺さぶられます。ただ正直なところ、いろんなテーマがありすぎて、なんとなく中途半端な印象がしてしまいます。
ヤギを殺すシーンがかなりグロかったり、結構過激なラブシーンがあったりしますので、そういう描写があっても大丈夫な方は、ご覧になってみるとイイかと思います。
ちょっとミーハーですが、公開初日。
久しぶりに良い映画を観ました。松田美由紀ってこんなに凄い演技ができる女優なんだ。それにしても、これだけフランスを意識して創りながらカンヌが獲れなかったのはショックだと思う。
これまでの河瀬直美監督作同様、好き嫌い分かれそう
今年のカンヌ国際映画祭コンペティション部門にも出品された河瀬直美監督最新作。
劇場公開に先駆け、先日WOWOWで先行放送されたものを録画して鑑賞。
奄美大島を舞台に、少年少女の恋、人と人の繋がり、人の生と死、人間と自然などを詩的に描いている。
まず目を引くのは、奄美大島の美しい映像。
ここ日本!?…とさえ思うショットもあり、神々しさすら感じた。
大自然と共存する人々の姿には、今村昌平監督の名作「神々の深き欲望」をも彷彿させるものもあった。
河瀬直美監督お馴染みのドキュメンタリータッチ。
作られた演出ではなく、現地の人々の姿を切り取る、または覗いているような演出だ。
(メインの役者以外は現地の素人を起用)
主役の少年少女には、オーディションで選ばれた新人とフレッシュな若手女優。
界人役の村上虹郎は村上淳の息子で、ナイーブな少年を熱演。(親子役で親子共演も)
杏子役の吉永淳はまだ無名に近いが、実に初々しい。序盤、制服のまま青い海の中を泳ぐシーンは幻想的な美しさ。
魅力的な箇所もあるが、映画は決して万人受けする作風ではない。
分かり難い部分もあるし、伝わり難い部分もある。
好き嫌い分かれる。
実際自分も河瀬直美監督の作品は一通り見てはいるが、それほど印象に残る監督ではなかった。
カンヌではパルムドールを逃したものの、これから日本で公開されたらどう評価されるか。
監督自ら“最高傑作”と語る渾身作、見ておく価値はある。
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