「ボンド円熟。成長ス。」007 スペクター N.riverさんの映画レビュー(感想・評価)
ボンド円熟。成長ス。
「スカイフォール」から見始めたシリーズの劇場以来、
VODにて「カジノロワイヤル」「慰めの報酬」鑑賞に続き再鑑賞。
クレイグ版は全作、内容が繋がっているという特徴がある。
だからして「スカイフォール」を飛ばして本作を観ると、
「カジノ」「慰め」と駆け出しのハチャメチャで危なっかしかった007がすっかり成長、
こんなに変わったのか、と思うほど落ち着いた姿で描かれていることに、
まずもって驚かされた。
それまで情報を聞き出した女はたいがい死なせてきた007だが、
未亡人役のモニカ・ベルッチはスマートに逃亡させているし、
ヤバくなったら面倒臭いと言わんばかり鉄拳解決も、
雪山の診療所では警備員相手に一喝のみ。無駄暴れはしていないし、
なによりマドレーヌへは基本、保護者目線と紳士。
最後、ブロフェルドへ、あえて笑って立ち去る余裕たるや、強くなりましたね、本当に、である。
成長したなぁ、嬉しい限り。などともう目線は近所の子供扱いと、いちいち感慨深かった。
全体も懐かしの007シリーズパターンへ戻るド派手構成。
だが、そうして積み上げてきた背景があるためか、過去作ほど荒唐無稽を感じない所もいい。
とにかくクレイグ版においては、
単品で観るのと、シリーズを追いかけてゆく中で観るのとでは、
どれほど一作、一作の印象が異なるのかよく知れた。
ぜひとも時系列鑑賞、前作を踏まえて観ることをオススメしたいのである。
ペールこと、ミスターホワイトとのやり取りなど「カジノ」「慰め」が抜けていると、なんのこっちゃ、だろうし、マドレーヌとホワイトの父子関係や、マドレーヌの内面そのものも腹落ちしないハズ。
(想像するにホワイトが女子供に手を出し始めた組織に反目したのは、娘マドレーヌをだぶらせたからで、強がるが、こだわるファザコンマドレーヌにとって目の前に現れた007は、本当は「一緒に穏やかに」過ごしたかったパパの代わりだ。しかしパパではないためやがて恋愛対象となる。一方ボンドにとってマドレーヌとの関係は、守り切れなかったヴェスパーの時の「やり直し」であり、マドレーヌの中には常にヴェスパーがいる構造をとる。そのため保護対象と同時に恋愛対象にもなる。この構図から脱却し、マドレーヌをマドレーヌ本人として見るため、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」ではけじめをつけにヴェスパーの墓へ出向くところから始まるわけだが)
MにQ、マニーペニーにタナーとボンドのチーム戦も、いいんだよな!