悪の法則のレビュー・感想・評価
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悪の法則は悪の連鎖
悪の法則は悪の連鎖、複雑化した人間関係やストーリーが有るわけではなく、基本主軸周辺しか描かれていないので、主題がシンプルに書かれている。悪の入り口での警告を何度も受けていたのにも関わらず、受け入れて悪の道に進む様子は現代の欲望社会をも指し示す、云わば倫理観を象徴しているようだ。自分自身を制する倫理観や悪の入り口への罪悪感は誰の心にも有るのでは、無いだろうか?飽くなき欲望との戦い。
プリンスシネマ
感想は。。。美しい
豪華な豪華なキャスティング。
キャスティングだけで見る価値があると思い、全く期待しないでの観賞です。
豪華キャストの映画は大抵キャスト負けするからです。
なんとも、不親切な、説明不足な映画でした。
この人は誰?何してる人?えっ?どんなつながりで?誰一人何をしていて、どんな人なのかわからないまま、話がはじまります。
最後まで、どうゆうことだったんだろう?誰が満足したんだろう?これで本当に思惑通りだったのだろうか?と疑問をもちながら終わりました。
でも、私的にはじわじわくるというか、これはこれでありなんだと思いました!
所々のセリフが重く、小説のような言葉選びも素敵です。
数日間はもしかして!なるほど!そうゆうことかも!と頭のなかで、謎を解決するようなわくわく感が続きました。
後から考えさせる新感覚で、私ははまりました。
ブラピの使い方はちょっと許せない。
脇の脇の脇役なのにも関わらず、ブラピだから、無理にあんなに登場させてしまったのではないかと思わされてしまう感じでした。
あと、やっぱり最後の乾杯は納得できない。思惑通りに事が進んだとは到底考えにくく、無理矢理感が否めない。
とにもかくにも。。。キャメロンは相変わらず美しい。それだけで、充分価値があると思います。
キャメロン・ディアスのつけぼくろとチータ
リドリー・スコット作品は、物語に隠された「謎」が魅力のひとつだったのだが、最近は単に「意味不明のひとりよがり」になっている。
人類の起源を暴くと言いながら主題はどこへやら、終わってみればエイリアンの誕生秘話になってしまった「プロメテウス」にはがっかりしたが、この作品はそれ以上に観客不在の大作。
事前にあらすじでも読んでおかないと、何をやっているのかさっぱり分からない。
想像を働かせれば、そりゃある程度は理解できるが、主要5人の役割りと関係にまったく触れることなく、映像だけが進む。話が進むのではなく、ただフィルムだけが駆けていく。そんな感じだ。
弁護士が、なぜ、どうやって裏社会のビジネスに手を染めたのかもまったく語られない。
前半はただただくだらないセリフで、何度睡魔に襲われたことか。ひょっとして、ボーッとしている隙に大事な台詞があったのかな?
この作品を観て分かったことは、人生を謳歌しているように見えるセレブでも、けっきょく誰かに支配されているということ。
素人が、ルールも知らんと裏社会に手を出したらアカンということ。
ルールを知る者は昼寝を貪り、知らない者は死に怯えながら逃げ惑うことになるということ。
目に残ったのは、キャメロン・ディアスの両目下の“つけぼくろ”だけ。
それと、チータがカッコよかったな。
個人的にはとても良かった!
この恐怖の盛り上がらせ方。やっぱり上手い。そして美学がある。
リドリー・スコットが好きなら納得できる作品なのでは。自分は期待していたものが観られた。
ある意味エイリアンシリーズ最新作。
後味は悪い
終始会話メインなので
字幕で見たこっちはストーリーを
必死に追ってる∑(゚Д゚)
裏社会がどんなものかというよりも
それぞれ皆さん個性が豊かで(笑)
そちらの方に目がいった(笑)
キャメロンディアスは車と○○○www
ブラピはあんだけ逃げ足早かったのに
すごーくあっけなくご臨終。
首締め装置や首飛ばしワイヤーなど
見た目は地味だけどエグい。
ここまで地味にエグいなら
カウンセラーの婚約者ローラも
ブラピが語ったエグい方法で殺られちゃう
のかと思いきやゴミの中でポイ?
あのドラム缶漬けの死体は?
カウンセラーが最後に手にしたCD-ROMは
一体何が映ってたの?
なんだか後味悪いスッキリしない
結末でした…
もう一度見たらわかるかなー?
でももう見たくないなー(-。-;
ネタバレ
キャメロンディアスが格好良すぎる!
いつもの感じでない所が凄く良かった。
それにスターがどんどん殺されていく展開は今の日本では考えられないし、そういう事を平気でやるのがアメリカらしさで良いところだなと思いました。
不条理過ぎる法則・・・
一体いつになったら話が盛り上がるのだろうか・・・。
世間の評価通りやはりこの映画は駄作なのだろうか・・・。
そう思いたくもなってしまうような、とにかく退屈な会話劇を中心とした前半戦でしたが・・・最後まで見終わってみれば、後から後からジワジワ来る感じが、思いのほかツボな作品でした。
まあ確かに手放しで面白かったと言えるような映画では無かったですが、かと言って単純につまらないと切り捨てることも出来ないような、妙に味わい深い映画だったと思いましたよ。
豪華キャストの面々が、皆それぞれイメージと逆のキャラクターを演じていたのも印象深かったですね。
ハリウッド映画のお約束を覆すように彼らが追い込まれていく姿は、新鮮味があってこれはこれで面白かったですよ!
ちょっとした欲を出したが為に、不条理な・・・不条理過ぎる悪の法則に嵌ってしまった御一行様方・・・その容赦無さ過ぎな様子には、思わずブルっと震えました・・・。
まあよくよく考えてみればそんなに深みのあるストーリーでは無かった気もするのですが、それをいかにも深みを感じれるよう作り上げてしまうリドリー・スコット監督は、75歳になった今でも未だ衰え知らずですね。
マイケル・ファスベンダー(カウンセラー)・・・ちょっとした欲を出したばかりに、悪の法則に嵌ってしまった主人公を好演。
身の丈に合ってない派手な生活や、どこか人間的に好感の持てない部分を見てしまえば、その後の展開は自ずと想像できた訳ですが、それにしてもほんのちょっとの欲を出しただけでこんなことに・・・やはり人間真っ当に生きるのが一番ってことなんですねぇ。
ペネロペ・クルス(ローラ)・・・健気に主人公を愛する可愛らしい彼女と言っただけのキャラを演じたことにある意味ビックリ。
主人公は、社会的地位もあって、こんな美しい彼女がいて、他に欲しいものなんてなかろうに・・・人間の欲って本当に怖い。
キャメロン・ディアス(マルキナ)・・・いつものはじけまくったキャラは封印し、今回は何か裏がありそうな妖艶な女豹に成りきっていましたね。
それにしても車とのアレには唖然呆然でした・・・何気にこう言う一癖ある役の方が向いているんですよね、本当は。
ハビエル・バルデム(ライナー)・・・「ノーカントリー」とは真逆過ぎるチャラい風貌・キャラに、ちょっとビックリ。
まあとにかくいい感じで死亡フラグが立っていましたね。
ブラッド・ピット(ウェストリー)・・・あのブラピがこんなキャラを演じるとはこれまたビックリ。
深みがありそうで一番おバカなキャラでしたもんね。
あれだけ偉そうに助言しておいて、まさかの・・・。
ブルーノ・ガンツ(宝石商)・・・何気ない台詞が後々深みのある言葉へと変化。
この映画はそんなシーンが多いので、睡魔に襲われないよう体調の良い時に見ることをおススメします!
ジョン・レグイザモ(チョイ役)・・・本当にチョイ役でしたが、私はこの方が出てくると妙に嬉しくなってしまうのです(笑)
まあそれにしても、人間のちょっとした欲望や変な自信って、本当に怖いものですね。
身の丈にあった生活で、ささやかな幸せを噛み締める、それが一番ってことですな・・・。
行間たっぷりの映画
哲学的詩文が言の葉に乗って、登場人物達の口からこぼれでる。
このセリフが、キャメロン・ディアスの口から出ずると、滅茶苦茶にかっこいい。
劇中、この世に存在する沢山の「世界」について長口上をふるう人物が登場する。
はめられた主人公カウンセラーに対して、彼の言いたいことは結局、陳腐な言い方をすれば「裏社会」に足を踏み入れたお前が悪い、ということ。失敗したことは取り返しがつかないが、死を迎える準備ができるかできないかの岐路にいると言う。
なぜ仲買人のウェストリーは殺されてカウンセラーは殺されず、婚約者のローラが殺されたのか。
「住んでいる世界」をわきまえずに足を踏み入れた彼への罰だろう。
ウェストリーを生かしておいたら示しはつかないが、彼を生かしておいてもなんら脅威ではない。
とるに足らない相手と見下しておきながら、報復というのが妻を主人公にしたスナッフフィルムを届けるという残酷極まりない仕打ち。
「自分の存在価値があった世界」がもうどこにもなくなってしまったカウンセラー。
あるリッチな世界に生きていた平凡な男が、生きる屍になった瞬間を目の当たりにし、戦慄する。
しかし、それもこれも全て最初に忠告を受けていたこと。
マルキナはせせら笑うだろう、忠告を聞かなかったあんたが悪い、と。
特に高度な推理は必要としないが、めまぐるしく登場する沢山の人物たちが、どこで誰をはめようとしているのか、また、麻薬がどういったルートを通って運ばれていき、秩序を乱した者がどのタイミングで殺されるのか、一部始終、目が離せないスリリングな展開だ。
観客は安全圏にいながら別世界を恐る恐る垣間見る。
そこには観客に対しての無駄な説明は一切なく、時折与えられる台詞から事態を推測せざるを得ない。行間たっぷりの映画。
余談だが、ペネロペ・クルスとキャメロン・ディアスはバニラ・スカイでも共演していたが、その時もペネロペは主人公の運命の女で、キャメロンは悪女だった。
美貌も金ももっている女が、嫉妬とも妬みとも違う、他の女に対しての純粋な破壊衝動。
平凡な世界に満足する相手に苛々しながらも、絶対に自分のいる世界には足を踏み入れてほしくないという、矛盾した感情。
そんな機微を演じるキャメロンには悪女がすこぶる似合う。
悪女であることで、セクシーさがひときわ増す。チャリエンよりこっちの方がずっといい。
チーターをペットに荒野で狩りの姿を楽しんでいたマルキナが、「思い出に温度はない」と言い放つ瞬間、彼女の冷たい笑みを眺めながら、つくづく「こちら」の人間でよかったと胸をなでおろした。
原題をカウンセラーとしつつも、真の主役は全くもって彼女であった。
すごい怖いです
人間って恐ろしいです。キジルシの世界がリアル。
リドリー・スコットよくぞやってくれました。いい出来!
最初から最後まで、切れ味抜群の恐ろしさとハードボイルド。徹底的でとてもGoodです!
台詞の数々が深くて残る。
けど細かいストーリーは何だかよくわからないぞ
しかし、それでも体感できた!
この映画すごい!
見た後も不条理な世界が尾を引く
こりゃ忘れられない映画になりそうだ。
頼む!誰か教えてください!涙
うーむ…ワシの鼻、やっぱり利きますね。
散々観せられた予告にピンとこず。
それでも、と信じての鑑賞でしたが…
「ディテールの分かりづらい、捻りも無い凡打」でしたわ。
豪華出演陣でも、どうにも埋めようのない凡庸な展開になんともモヤモヤ…
二時間付き合って、ただ分かったのは「メキシカン・ギャングはシャレにならない」てことだけ!?
いや、流れは分かりましたよ。
でも○○の雇った輩は全滅してるのに、どうして最後に全て手に入れてるのか、さっぱり納得がいかない!
そもそも主人公に、ブッ込みがかかる道理が納得いかない!
賢い方に、そこいら辺を是非ご教授頂きたい一本でした。
雰囲気はとても好き。
でもエンタメ、としての完成度はどうしても認められない。
ありがたがれないよ。
良質の小説のような示唆に富むセリフに満ちている。
「悪の法則」。リドリースコット監督。R-15。いや、社会人二年目くらいからがいい。全体でR-24くらいの内容。
日本人は物語に教訓を求めすぎる。
そうして、理解できないと傷つき、否定する。
共感があれば何でもよい。面白ければそこからリアリティのボーダーラインが生まれるものだ。
つじつまとはそういうものだと思う。なんとも利己的で個人的でいい。面白ければ・・・。
これ、もしかしてカルトになるかも。でも、一般的には薦められないなぁ。
ストーリーは複雑ではないが、キャラクターの役割を説明せずに進むドライなスタイル。
物語背景や現状、キャラクターの状況説明が少ないかわりに、小説のような示唆に富むセリフに満ちている。このスタイルがこの映画の代えがたい魅力。
この映画は「読む」映画。表情ではなく、示唆に富んだ比喩ばかりのセリフを読むことでかみしめるように楽しむのだ。
正直、字幕訳者は時間内の理解を選んだらしく、比喩表現を無視して短い文章で状況を説明する意訳を多用していた。
文学性に富む原語の表現は字幕スーパーに表されていなかった。聞き取りやすい英語なので是非堪能してほしい。
メタファーが意図する本能に食い込むセリフの不安の暗示は、すべて現実になるようしむかれている。
役者も主人公3人の他にブラピ、ブルーノ・ガンツやらチョイ役でERのジョンレグイザモやら、これまたERのゴラン・ヴィシュニックやらアンダードームのディーンノリスやら妖しいのがいっぱい出てくる。
ブラピはいかがわしさ満点で、マイリーサイラスのお父さんそっくりに仕上げてきた。
ラスト前シーンは、このいかがわしさをいかんなく発揮してくれる。
まるで小説を読むような映画。これで原作なしだから脚本力と演出力のコラボがスゴい。
ただ・・・映画館観客の1割はついていけなくて爆睡。ラストも不満お方たちが6割くらいはいる。
特に映画体力とか映画遺伝子とかは、タランティーノのようなオマージュや引用もないし妙な時間軸交差もないので全く不要。
クラッシュのような時間交錯因果応報サスペンスでもなく、ユージュアルサスペクツのような切れ味のあるミステリーサスペンスとも言い難い。ジャンル分けの難しさがある作品。
しいて言えばあれに近いか。キューブリックのアイズワイドショット。
シュニッツラーの不安心理劇。
でも。それを超えたセリフの示唆に目力が加わる。訳も分からず涙が胸の奥からこみあげる作品でした。
<ネタバレあらすじ>
メキシコ国境間の乾いた土地、太陽、悪徳なThe richの面々。
原題は「The counselor」。相談役、ということで。劇中では「弁護士」と訳されていた。
マイケル・ファスベンダー扮する弁護士。ファビエル・バルデムはエルパソの下水業者を隠れ蓑にした麻薬ディーラー。
ドラッグは中米内の原価とLAでの末端価格差がとても大きい。
カルテルから仕入れて安定供給すれば豪華な暮らしが約束される。
毎日がパーティの暮らしのディーラーの隣には銀のマニキュアと金の八重歯が光る謎の女。キャメロン・ディアス。 プールで泳ぐ肩にはネコ科の肉食動物柄の斑点タトゥ。
2頭のチータを飼い、Cat、と呼ぶ。野生が好きなのだ。本能の赴くまま。バイセクシャル。
そして、ファスベンダーは交際中のペネロペ・クロスに夢中。
午後2時。昼か夜かもわからない気怠い寝起き。
「七日で戻るから。」と白いシーツの中で女の股に顔をうずめながら語りかける。
「どこで覚えたの?そんなこと・・・。」と貞淑な彼女を辱めるR-15のセリフ。
愛する恋人に勝負をかけたギフトを。
宝石商は年老いたベルリン天使の詩。ブルーノ・ガンツ。
「宝石は欠点を評価していくもの。」とダイアモンドの4Cを手ほどきする。
レコメンデーションは3.9カラット、カラーはD、クラリティはVSだと説明する。
「ダイアモンドの最高級は何もないこと。光そのものが最上級。「欠陥」が少しずつ光を損ない、評価のポイントとなる。そして、警告の色を放つ。」
Sweet daiamond for your hand・・・。
ダイヤモンドは国際シンジケートのにおいがする・・・。
マイバッハを駆るファスベンダーは愛する恋人のために3.9カラットを買ったのか他の推奨品を買ったのかは明らかではない。だが、苦渋の表情。経済的な問題が最近起きたことを示唆する。
そして、麻薬カルテル関係者の古い親友ブラピに近づき、ハビエルとの闇商売を開始する。
ブラピは警告する。「俺は助言はできない。が、こんな警告を聞いたことがある。それを聞かせる「ここから先は来るべきじゃない。」と。」
ハビエルは銀の爪の女にハマりながらも不安を覚える。フェラーリをファックする女。
「表情の読めない女とは付き合うべきじゃない」と。「話すべきじゃなかった」と。
一方、キャメロンはプールサイドでペネロペと過ごす。
バイセクシャル。ペネロペの身体は何度も重ねた熱い夜を忘れられない。
「結婚するの。」
「指輪、外して見せてよ。カラーはG、クラリティはSV2、大きさは3.5もしかして3.8かも。」
肉眼視だけでズバズバとダイヤ評価を辛辣にあてていく。ブルーノ・ガンツが示した1ランク下ずつを正確に。
カルテル、シンジケート、銀行・・・。個人の情報を操り罠を周到に繰り広げ展開していくのは野生の狩猟本能からか・・・。
そう。全てはキャメロンが仕掛けた罠に皆がハマっていく。
だが、ラストを見る限り、計算を清算するような映画ではない。
これは本能の残酷と美しさを示唆とともに叙事にした詩なのだ。
原因は結果を否定できない
不条理にも思えるが、原因は結果を伴う。自分の行動には責任を負わなければならない。映画的な演出はなく眈々と進むストーリーには恐怖ではない怖ろしさがある。人生の過ごし方に考えを馳せらせられる。
CMを見てしまうと…
テレビで流れているCMを見てしまうと「この後CMのあのシーンに続くんだろうなぁ」と予想出来てしまうので、出来るだけCMは見ないでおきましょうw
内容としては良くある「君子、危に近付かず」です。
世界はその一端しか知ることができない。
この映画の肝は『世界はその一端しか知ることができない』ということではないだろうか。
弁護士の主人公は恋人との生活をより豊かにするために、麻薬取引という『闇の世界』へ踏み込んでしまう。どんなに警告されても、まさか自分がそのような目に遭うとは露ほども思っていなかったのだ。
そうして彼は唐突に、二度と引き返すことの出来ない所にまで堕とされてしまう。
『世界は一端しか姿を見せない』それを象徴するように、物語もまたその全貌をなかなかつかませてくれない(少々やりすぎかな、とも思ったけどw)。
バキュームカー(?)の中に隠して密輸する通常の取引に、マルキナ(キャメロン・ディアス)の一味が横取りするが、後にまた麻薬カルテルに取り戻される。
そのかわりにマルキナはウェストリー(ブラッドピット)を嵌めて、その資産を横取りする。
あらすじだけでも難解だが(自分は最後までわからなかったw)、この映画はさらに、説明をしないのだ。
誰が何をやっている人なのかも説明しないし、どれが偶然で、どこまでが計画されていた事なのか何も説明しない。
またマルキナの背後にどれほどの組織があるのかも語られず終いだし、麻薬カルテルの女を弁護したことも偶然なのか誰かの策略だったのか…。
それは主人公が垣間見ている世界と同じなのだ。
リドリー・スコット監督は僕たちに『神の目』を持たせてくれない。
その主人公と共に『世界の一端』を垣間見ることしか許してくれないのだ。
物語を語らない代わりに、彼らは世界を語る。
ある者は「本当は金がなくたってやっていける。女だけはどうしようもないがな」と言い、ある者は「君は岐路に立っていると思うだろう?けれどもう随分前にすでに選択はされているんだよ。君に出来る事は受け入れることのみだ」と語る。
たどり着いた結末は決して楽な場所ではなかった。
でもね。
それでも世界はほんの一端しか見せていないんじゃないかな、と思うのだ。
僕たちはその全てを知ることではなく、一端から学ばなくてはいけないのかもしれない。
そんな風に思ったり、思わなかったり(笑)。
テーマが分かれば記憶に残り続ける
この映画は人間ドラマでは無く、人間と世界の関係を描いた映画だ。だから登場人物に共感しようと思ったりうまく納得の出来る因果関係に置き換えて考えようとしてもあまり意味が無い。
この映画はたぶん多くの人にとってとても難解に感じると思う。その理由は幾つかあって、1つはストーリーでは無くテーマをを描いている映画だからだ。しかも心理描写は殆ど無く事実だけを切り取って構成されている。20億円クラスの麻薬取引の物語でありながらその取引内容には意味が無い。また登場人物の不用なバックボーンは一切が端折られている。例えば弁護士が非合法な世界へ踏み出した動機が曖昧なのはそれに意味が無く、違う世界へ足を踏み入れた事が重要だからだ。反対に語られるセリフやシーンには全てそれ以上の意味がある。
もう一つはコーマック・マック-シーの全著作を知らなければ本当のテーマを知るのは難しいということだ。マッカーシー作品に通奏低音としてある、絶対悪、善悪とは無関係の死、野生、価値観の違う世界への越境、そして人間の善性等を知った上で観ない限りこの映画から本当の意味を見いだすことは困難だ。また見いだしたとしても解釈は1つでは無い。
コーマック・マッカーシーがノーベル文学賞候補に挙がるくらい評価が高いのは、人間と世界の根本にある深い問題をただの出来事を通して描くからだ。だから読み手はそれを読み解く知識が必要だ。本であればある程度の前提を知っている人しか手に取らないだろうが映画は違う。リドリースコットのハリウッドスターが大挙して出演するノワールという前提で楽しむつもりであれば面食らうだろう。そしてそれは観客のせいじゃない。そこのミスマッチはおそらくこの映画を思った以上の低評価にしてしまうだろう。
ただこの映画を観た後に意味は分からずとも不思議な何かを感じたなら是非脚本をはじめとしたマッカーシーの著作を読んでみることをお勧めする。
陽光きらめく地獄へようこそ
全米での収益の悪さに加え、ここでの不評の嵐を見て
よっぽど不出来な映画なのかと思っていたが、
個人的にはかなり面白く見ることが出来た。
いや、まあ、確かに話のスジは追いにくい。
僕自身、完全に物語の流れを理解できた気はしていない。
主人公があの死刑囚と出会った経緯とか、バイカーと
主人公のつながりは偶然だったのか謀略だったのかとか、
あのメキシコの弁護士を主人公が頼った理由とか、
最後マルキナが談笑していた男の正体とか。
だが、何が起こっているかは十分理解できる。
主人公とその周囲の人間が、自身の欲望とひとりの
貪欲な女によって地獄に叩き込まれるまでの物語だ。
* * *
マイケル・ファスベンダー演じる主人公が憔悴し、
絶望する様。取り戻しのきかない人生の無慈悲さを
語るダイアローグの数々。
一般人には狂っているとしか思えない裏社会での
流儀の恐ろしさ。じわりじわと主人公たちを
追い詰めるカルテルの、濁った空気のような存在感。
淡々としていながらもサスペンスフル。
ブラッド・ピットが殺害される直前の、
視界を極端に狭めたようなカメラワークなんて、
特に緊張感に満ちていて素晴らしい。
そしてこの監督ならではの、
コントラストが映える映像も見事なものだ。
砂漠の殺伐とした空気、渇ききった強烈な陽光、
青白い石壁の冷たさ、夜の闇の底知れな い深さ。
特筆すべきは終盤付近。
いよいよ追い詰められた主人公が彷徨う怪しい街並みは、
陽光きらめく冒頭とはまるで別次元の淀んだ暗黒世界。
D・クローネンバーグ監督作品にも通じるような、
現実と薄皮一枚隔てただけの空間に存在する悪夢だ。
* * *
キャラクターも魅力的。全員について触れるのはやめるが、なんといってもC・ディアス演じるマルキナが絶品。
いつか他のレビューでも書いたが、R・スコット監督はとある
雑誌のインタビューで「銃が好きだ」と語ったそうだ。
「銃は存在自体が機能だ。一切の無駄が無く、だから美しい」
本作でその“機能美”の象徴として登場するのは、豹だ。
獲物を追う事に特化した豹のしなやかな動作。
優雅さと残忍さを併せ持つその容姿。
豹柄のタトゥーを入れ、常に腹が空いたとのたまう
マルキナは、いわば底なしの胃袋を持つ豹だ。
まさしく獣の如き冷酷さで己の腹を満たそうとする。
獲物を取り逃がしても、すぐ次の獲物を狙おうと貪欲に動き続ける。
映画内で誰よりも優雅に立ち回る彼女は、
美しいほどに磨き抜かれた悪だ。
残忍な獣は、獲物をなぶって遊ばずにはいられないのかも
しれない。マルキナや麻薬カルテルの人間たちは、
ある意味で人の生死の価値を一般人よりもよく理解している。
自分の命は死んでしまえば無価値だが、親しい者の死には
とてつもない哀しみと恐怖が伴うということを。
主人公はあの結末の後で殺されるだろう。だが、
あのふざけた挨拶の記されたDVDを目にした時点が、
彼にとっての絶望のピークだったのだと思う。
* * *
思うに、『豪華スターを配したハリウッド大作』と
認識されなければ、本作がここまでの低評価を受ける事は
無かったのではないか。
一から十まで見せないと納得がいかないという方には
この曖昧なストーリーは不満だろうし、
バイオレンス描写や派手なドンパチが好きな方にも
全く食い足りない出来だろう。
宣伝で『悪の法則を操るのは誰か?』という
コピーを印象的に用いたのも不味かったと思う。
このコピーでは大部分の人間が、犯人探しや
ドンデン返しありきのサスペンスを期待してしまう。
主人公を窮地に追い込んだ一番の悪党がマルキナで
あることは開始30分で分かってしまうのに、である。
* * *
個人的な不満点もここで挙げておこう。
主人公の背景や麻薬ビジネスに手を染めようとした
動機についてだけは、もう少し明確に描いてほしかった。
主人公の転落と絶望を描くなら、落下開始地点の彼を
描くことは不可欠だったと思う。
恐らくは単に金銭欲からか、恋人との生活を維持するのに
金が必要だったのか、あるいはその両方だとは思うのだが。
それと豪華キャストの中で、ペネロペ・クルスだけは
別のキャストの方が良かったんじゃないかな。
情熱的な役柄の多い彼女にしては、今回はおとなし過ぎる
というか純情過ぎるというか。
どうも彼女のイメージにそぐわない感じを受けたし、
周りのキャラも強烈過ぎて霞んでしまって見えたかな。
* * *
だが、ハリウッドエンタメのようなストレートな面白さを
期待さえしなければ、本作はかなり面白いと思う。
この映画の肌触りは大作映画ではなく、
インディーズ映画のそれに近いのだ。
コーマック・マッカーシーの著作は読んだ事が無いが、
この映画からは長編小説ではなく詩のような匂いがする。
こちらから理解を求めなければ意味を掴めない、
一種突き放したような抽象性。個人的には
そのぼんやりとした雰囲気も魅力だと感じる。
* * *
主人公がダイヤを購入しようとするシーン。うろ覚えだが、
ダイヤの鑑定士とこんなセリフのやり取りがあったと思う。
「あなたの眼からすれば、このダイヤは最高級ではない?」
「私に言わせれば、どんなダイヤにも違った魅力があります」
完全無欠のダイヤにこだわらず、多少の雑味が付いていようが、
身の丈に合ったダイヤで満足するべきだったのだ。
それ以前に結婚を約束できる恋人がいて、
その人にダイヤを買うことが出来るというだけで
十二分に幸福だと思い直すべきだったのだろう。
強欲な者は、さらに強欲な者に狩り殺される。
金儲けの世界においてはそれが摂理なのかもしれない。
そりゃお金は欲しいけど、この無慈悲な食物連鎖、
できれば参加せずに済まして生きたいすね。
判定3.5~3.75といった所だが、
作品を擁護する意味も込めて4.0判定で。
面白かった!
〈2013.11.17鑑賞〉
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