「全てがひっくり返る瞬間」ジャッジ! omoroさんの映画レビュー(感想・評価)
全てがひっくり返る瞬間
・品のないカリカチュアライズ
・全然笑えない楽屋落ち風ギャグ
・はいコレ伏線ですよー後で生きてきますよー
みたいなのが目白押しで中盤までは酷い映画を観にきてしまったなーと反省しきりでした。
アバンタイトルでトヨエツが言うセリフもエクスキューズにしか思えなかったし。
レンタルで見ていたら絶対早送りしてた。
それでも心が折れなかったのは妻夫木聡と北川景子の存在感に因る所が大きかったと思う。他のキャラクター達とリアリティラインが違うのが何だが心地良くて、2人が出てくる場面は割と安心して見られたかな。あと、さりげに撮影が良かったのも心が折れなかった要因かも。
でも、劇中で流れたとあるCMの圧倒的な説得力にやられてからジワジワ来始めて、終盤に差し掛かった辺りのある場面が素晴らし過ぎてそこで全てがひっくり返りました。
ああいう体験ができるから映画館で映画を観るのはやめられません。
後で調べて件のCMは実際にカンヌで受賞した有名な作品だと知りました。
作品に対して一旦好感を持ってしまうと、ダメだと思っていた部分についても好意的に解釈してしまうものです。
・品のないカリカチュアライズ
全体的に平易さ優先・説明過剰のテレビ局映画って感じだったけど多くを語らない演出も所々に見られたので、やろうと思えば抑制する事もできるんだけど演出のバランスについてはそういう判断なんでしょう。
クライアントの無茶ブリは仕事してると似たような事あるし、いかにもって感じの業界人って実際居るし。ステレオタイプの”ガイジン”についてはよくわからんw
・楽屋落ち風の寒いギャグ
広告業界あるあるなのかよくわかんないけど割と実話を元にしてそうな気がする。中の人達に実際の所を聞いてみたいですね。
ヤン•シュバイクマイエルとかフランク•キャプラのオマージュは予想外でウケた。
・あからさまな伏線
序盤での伏線提示のあからさまさには醒めたし、中盤までは伏線の処理が想定内な上に天丼過ぎて寒いと思っていたけど、
終盤で予想を裏切って伏線を更に展開させる所は素直に上手いと思いました。
しかもそれをほとんどの伏線についてやってるのがエラい。
演出を含めどこまで情報を提示するかというのは難しくて、分かり易くしようとするとどこまでも分かりやすくできるけど、そうすると分かりにくい(と自分が感じる)ものを理解できた時の快感が薄れてしまう。あらゆる視点からのそれを満足する作品ってのは相当難しいと思います。
どのレベルに照準を合わせるかって事だと思うけどこの作品はターゲットをどこに想定してたんだろう?プロットもキャストも良いのでもう少し抑制された演出だったらどんな作品になったんだろうか。