そこのみにて光輝くのレビュー・感想・評価
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8,000円
8,000円の女のお話である。
仲介なく8,000円の女なのである。
この仲介なく8,000円、という金額設定がこの女の相当負のスパイラルな人生を物語ってはいる。
個人的には、今のところ、期待値に対しての落差の激しさという意味で今年のワーストにあげられる本作。
本作、すべてがテンプレでできていて、何のハズシも無いのである。要は、こんなん観たいでしょう?、こんなんショッキングでしょう?こんなん、綺麗でしょう?の寄せ集め。
登場人物も薄い、うっすい。話もうっすい。
貧乏なくせして、パチンコに行っているカス。とっくの昔の脳みそをやられている姉。この人らになにをどうしろっていうんですかね。
主人公がバカ女に惹かれたのは、決まっている、自分より不幸だからだ。
この姉弟の馬鹿さ加減はドラマの盛り上げのみのためだけの、実は何にも考えていないことがよくわかる。
何の役にも立たない、他人を苛立てるのに長けている弟は、ちょっと先が見えてんのに、後先考えずに、って、やくざ映画?
姉は愛を知ったら、その途端、これまで散々慣れ親しんだ社長さんのアレをギャー、ってどんだけバカなのか?
ましてや社長さんに殴られ、そのまま帰ってどうすんの?
百歩譲って、この愚行が、不遇な生活環境から生まれた負の連鎖、ってことにしよう。それと姉の父親に対するアレはなんの不遇なのさ?ただただショッキングでしょ?!ってしか作者は考えてないのよ、こんなん。
時間も長い、無駄に長い。演技もくどい。
この手の映画を見に来る人間に、底辺の人間のことなどしたり顔で語ってほしくはないのだが、その1,800円でどうぞ救ってやってください。
底の身にて魅かれ輝く
『花腐し』との2本立てにて上演されていたが、綾野剛のキャラ付けが確かに似通っていた。
女性に甘える姿が、かわいらしいのにカッコよさも失わないのはズルい。
肝心の中身に関しては、個人的には微妙。
話自体に起伏がないのはいい。
しかし、中心のはずの達夫と千夏の感情の動き(特に最初の衝突から惹かれ合うまで)が理解しづらかった。
逆に、ストレートバカの拓児とストレートクズの中島に関しては分かり易い。
菅田将暉がこの頃から抜群に上手く、単純なのに一番行動が読めなかった。
恐らく、あの瞬間まで千夏と中島の軋轢を“痴情のもつれ”くらいにしか捉えてなかったのだと思う。
逆に言うと、他の登場人物は後半にいくほどテンプレの動きばかりになっていて残念。
とはいえ、達夫や千夏、拓児らが笑っているときにはこちらも微笑ましい気持ちになった。
それだけ彼らに実在感があり、感情が同調していたのだと思う。
役者陣の演技は素晴らしいだけに、全体的に、特に終盤が冗長なのであと15分は削ってほしかった。
数カットの出演だが、奥野瑛太の死に顔は本作の白眉。
あの空洞のような目は、達夫のトラウマに説得力を与えるには十分なインパクトがあった。
それだけに、アッサリ山へ戻る気になったのは拍子抜けしたのだが…
作品が輝く瞬間がなかった
ある程度いい映画には印象に残るシーンというものがあるものだ。作品が輝く瞬間とでもいうだろうか。それが本作にはない。
脚本は良いのにイマイチ気持ちも作品ものらないのはそのためと思う。
ラストシーンはまあまあ良かったが、一番良かったのは食堂で達夫と拓児と千夏の三人が笑う場面だ。固定カメラの長回しで、キャストの演技力だけに頼ったシーン。
ここだけ考えたら良いシーンだ。しかし多くの場面で固定カメラの長回しをしたせいで、インパクトが薄れてしまった。
呉美保監督作品は初めてなのでこういう作風なのかわからないが、出演者が良すぎて余計な演出をしたくなかったのかもなと考えたり。
良すぎる演技力が作品の足を引っ張る事もあるのだと思った。
あとは、何気に一番重要な役と思われる拓児の心情描写と変化が掴みにくかった。
ただのお気楽な能天気青年のようにみえる拓児にも思うところはあるって部分は重要だと思うんだよね。
今までは耐えていたのか、それとも彼の中で変化があり怒りを覚えたのか、もしかしたら最初から突発的なだけなのか、解釈の余地があるのはいいことだけど描写不足により余りにガバガバで、これでは何も描けていないのと違わない。
突き抜ける瞬間を待ち続けて最後まで突き抜けなかった見所の薄い作品。
つまらなくはないし演技も良かっただけに何だか勿体ない。
名演技のぶつかり合い
綾野剛のどうも生気のない気だるさ不器用さ
池脇千鶴の薄幸でなまめかしい様
菅田将暉の乱暴で人懐こい明るさ
高橋和也のいやらしい腹黒さ
菅田将暉の歯を黄色くまでする演出、ああ本物のようだと思った。
素晴らしい演技の連続がなければ最後まで見ることができなかった。それほどストーリーは暗く、他人の秘部をこれでもかと見せつけられているような感覚。まだ私にはこの映画を絶賛できるような理解力が備わっていないことが悔しい。
もう大人なんだから、函館という街に留まらずどこへいったっていいじゃないか。家族から独り立ちして暮らしたっていいじゃないか。もっといい仕事なんて世の中たくさんあるじゃないか。タバコ代とパチンコ代を貯金して、職業訓練にでも回せばいいじゃないか。登場人物の幸せを願うと、勝手で陳腐な綺麗事の押し付けばかりしか浮かばない。
そんな普通の選択肢がないなかで、彼らは毎日生活している。貧困で苦しいとかを押し出すのではなく、ただそれが普通の生活だと描かれている。一生懸命に生きているとかでなく、それが普通なのだという感覚。
2人が恋仲になること、腐れ縁を終わらすこと、事故があった仕事を再開すること、どれも希望として描かれるには幸せの期待値が低くはないか。でもそうやって普通の生活の中で、少しずつでも現状に抗っていくこと。それが光輝くということなのだろうか。
SEXのシーンが多いし結構長い(←重要)
家族で見て気まずくなる人もいるかと思いますので、重要な事は先に買いときました。
性を中心にストーリーは展開します。
話の内容もだが、薄暗いシーンが多すぎる。
主演は間違いなく池脇だろう。
この原作者の主人公は口数が少ない、所謂ヤレヤレだぜ系が多い。それに比べて池脇の感情や性交渉、介護における性の問題と、池脇を中心にストーリーは展開していく。
そしてラストの朝焼けの池脇の美しさよ。
丁度いい肉感と汗、埃、悲壮感、ハマり役だと思います。素晴らしい。
悲しき現実が静かに流れていく
パチンコ屋で借りたライターから始まった出会い。
刑務所から仮釈放で働いてる拓治の為に社長と関係を持ち、性欲が抑えられない認知症の父とも。
達夫は山の事故で心の傷を負ったけど千夏の為に仕事復帰を決意。
拓治の姉を思う気持ち故に社長を刺してしまう。
海でのシーン、撮り方が綺麗だった。
期待していたんだけど。
評価がいいので楽しみにしていたのだが、
暗いというか、セリフがない時間がすごく
長く感じてしまって、途中で飽きてしまった。
物語のスタート、石の下に誰かが
下敷きになっている場面がある。
これと、綾野剛はどんな関係があるのか。
過去に夢にまで出てくるほどの悲しみがあったことがわかるが、これがなんなのかが
なかなか出てこない。
自分の失敗で、一人死なせてしまった。
このことから、ひどく塞ぎ込んで
生活するようになる。
そこで菅田将暉に出会う。物事を軽く考えていてちょっと危ないやつ。
この妹のことを好きになる。←ここ、
なんで好きになる?って思っちゃった。
お金を稼ぐために、体を売る仕事をしてるし、
ちょっとやばい男と付き合ってるし…
私が男ならこの女はやめておく。
そして、また同じ仕事をしようとは
思わない。
もう一度見たら、感想変わるかな…
ただ、淡々と
綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉。
皆さん素晴らしいです。
高橋和也さん、素晴らしいですが役が非情で、くそ人間だったので、出てくる度にイラッとしましたよ。そのくらいリアリティを感じました。
「生きる」と言う事に焦点が当たっていたように感じました。メインの3人はそれぞれ、事故で部下を亡くした達夫(綾野)、殺人事件を起こし仮釈放中の拓児(菅田)、家族を養う為に身体を売る千夏(池脇)。3人とも生き方が苦しく、生きることを諦めているようでいながら、やっぱりもがいている。そういう、人間臭いところが存分に描かれています。
それから、"愛"を感じる場面はとても丁寧です。
達夫と千夏、千夏と拓児、拓児と達夫(ここは愛というより情という感じ)
なんとなく感じたのは、言葉で相手を救うのではなく、どれも行動で示されているようでした。
ラストシーンも、どんな言葉が?と期待しましたが、やはり言葉は発せられることなく、でも優しさが伝わる。
日本人的な印象を持ちましたが、とても良かった。
自分の今いる場所に決して満足はしていないのに、それを見ないフリをして過ごしているのは見ていてこちらが辛く、虚しくなる。
そういう人間を利用するクズ野郎もいますが、そこに頼るしかないという負の関係。きっと日本の中にもたくさん存在するのでしょうね。
それが一番悲しい。
文学だった。
映画と言えば 実は 日本のものはずっとこんな感じだった。
日本の映画界って こういう暗さを描いてこそ、という時代があった。
映画の世界には こういう ギリギリを生きてる人を描く事こそが芸術だという時代があった。
だから
洋画の明るさと豪快な笑いや美しい恋愛に惹かれた。
高度成長期の頃
サラリーマンはガムシャラに働き、小さな公団住宅でささやかな幸せを得て、普通である事 に満足した時代。
その上には戦後の成金が存在し
一方では、その普通さえつかめない人々もいた。
はっきり言うと
こういう映画は ウンザリだ。
人間を描く事をとことん追求した汚さが嫌いだ。
始終 タバコを吸い続け
先のない両親の姿を見続ける。
底抜けに明るい弟は
清濁 併せて飲み込めるはずの日常を暮らしていたはずだった。
その弟が屋台のたこ焼き屋のピックを手にした時
見ている側も一緒になって「刺してしまえ!」と思う。
こういう風にしか生きられないと思い込んでいる姉。
その姉が横たわる父親に手をかける時
死んでくださいと思う。
21世紀の今では
半ば古典化した こういう物語において
なんとなく 匂いを感じる世代であるからこそ
あまり見たい物語ではない。
原作者もそうだ。
芥川賞に5度ノミネートされながら受賞を逃した不遇の作家って、だからなんで 死ななくちゃいけないのか。
同世代の村上春樹氏はノミネートすらされていない。
令和となってしまった今
この 丸ごと昭和の話は
その匂いを知っている者には 目をそらしたくなるものなのだと、見ながら心底 思った。
※アマゾンプライムにて視聴
暗がりに輝く光
仕事の事故で可愛がっていた部下を喪くしたショックを引きずり、死んだように生きている達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で拓児(菅田将暉)と出会う。達夫は拓児にタバコの火を貸す。ただそれだけで、拓児は達夫を自分の家に誘う。拓児はそれほど人懐っこく、そして底抜けに明るい若者だ。
拓児の家は海岸近くのバラックで、そこには病気で寝たきりの父と母、そして姉の千夏(池脇千鶴)が暮らしていた。
拓児は傷害事件を起こして刑務所にいたが、いまは保護観察の身。千夏の愛人で町の有力者の中島は拓児の引受人になり、自分の会社で拓児を働かせている。
千夏は水産加工場で働くが、それだけでは家族を支えられず、夜の町で身体を売っていた。
綾野剛、菅田将暉、池脇千鶴、この3人が本当に素晴らしい。
達夫は拓児の明るさに救われ、拓児も達夫を慕う。そして達夫と千夏は愛し合うようになる。まわりから見たら、ひどい日常かも知れない。しかし、そこに光はあるのだ。
それは、お互いからしか見えない光だ。
終盤、達夫と千夏が達夫の部屋でスイカを食べているシーン。達夫は元の仕事に戻ることを決めた。千夏が言う。
「戻る前に亡くなった人のお墓参り行こう」
達夫はしばらく何も言うことができない。沈黙の後「ありがとう」とだけ言い、千夏の胸に顔をうずめる。
沈黙の長さ、短いセリフ、そして嗚咽。お互いがお互いを、どれだけ必要としていたかが伝わる。そして、この後2人は結ばれる(このシーンも素晴らしい!)。
映画は、達夫の元に彼の妹から手紙が届くシーンで始まる。妹は亡くなった両親のお墓の心配をしている。妹はすでに嫁いでいる。そして、達夫がお墓の問題に無頓着なのは、家族がいないからではないかと指摘する。
家族は面倒だ。
千夏は父の病気のために家を出ることも出来ず、そして身体を売っている。保護観察中の弟も心配だ。
千夏は達夫との結婚を決め、愛人の松本と別れようとする。松本は、地元企業の社長で周囲には鷹揚な態度を見せるが、実に“小さい”男で、拓児の雇い主でもあり、彼の保護観察の引受人の立場でもある利用し、千夏との関係を続けようとする。千夏が身体を売るほど困窮していることには手を貸さないクセに、だ。
千夏を巡って達夫と松本が争いになる。
殴り合いのあと、達夫が言う。
「家族、大事にしたらどうですか?」
松本が返す。
「大事にしてっから、おかしくなんだべや」
千夏は家族に縛られている。そもそも弟のことがなければ松本との別れ話も簡単なはずだ。
千夏は元気だった頃の父との思い出を大事にしている。しかし、重荷に耐えられず、千夏は父を手にかけようとする。駆け寄って達夫がそれを止める。
千夏の「今の」家族は大変だ。しかし、達夫と育むのは「新しい」家族だ。
終盤、もう一度、達夫の元に妹から手紙が届く。妹は達夫の結婚を祝福する。
ラスト、父の部屋から飛び出した千夏。彼女を追う達夫。2人を巡ってカメラはパン、そしてフレームは遠くに太陽を捉える。手前に立つ2人。そう、太陽は眩しくも2人を照らしている。
この後も、決して楽ではないだろう。しかし、彼らはお互いの存在に光を見出すことによって、生きていけるだろう。そういう希望を感じさせるラストシーンだ。
泣いていた千夏、こわばった顔の達夫だが、2人は僅かに表情を緩める。
綾野剛のインタビューより。
「この人たちはこの先も生きていくだろうと伝えることが、一番重要なんだと思います。」
暗いから、そこで輝くもの、それが光なのだ。
なんとも言えないきもちになる
パチンコ屋で出会った少年(菅田将暉)の姉と恋をして、その姉が身体を売ることを仕事にしていて、相手が菅田将暉の仕事場のオーナー。
この繋がりが3人の関係を崩していくのが、リアルに描かれていた。
一緒に山に行こうと居酒屋で話していたのが見終わってからではとても切ない。
父親の首を絞めたのに、名前を呼ばれて、どんな心境なのだろうと想像したけどできなかった。
最後の2人の笑顔が未来を見ているようで良かった。
性の翻弄、憤りの罪
『そこのみにて光輝く』(2014)
<性の翻弄、憤りの罪>
2月の朝6時前はまだ暗く、やがて明るくなっていくだろう。外出の用事があって早く寝床から出て、こうした時間にみる。GYAO!のキネマ旬報ベストテン特集からみて、1位だった作品のようだが、少しと言っても随分前に感じるのだが、日本映画専門チャンネルで、原作の佐藤泰志の特集と言うことで、この映画も幾つかの他の作品と放映していたかも知れない。勘違いしていて、15歳に関しての条件のある映画ということで、別の男の監督と別の女優の映画かと思っていたのだが、違っていた。監督は女性で、よくわからないが在日韓国人という関係の人なのか、そうした名前で、主演女優は池脇千鶴だった。池脇は清純な女子高生のコマーシャルで出てきたと思うが、わけあってとは言え、不倫は不倫であるから言語道断なのだが、不倫男性役が男闘呼組の高橋和也との正常位激しいバウンド付きのセックスシーンがある。池脇が34歳の肉感を少し見せている。こうしたシーンを挿入するのはどうしたものなのか。その見せ方の程度にもあるか。舞台は北海道らしい。
方言もそうなのだろう。時代背景はわからない。原作者が1990年に自殺している。1980年代なのだろうか。貧困の姉弟がいて、父親が寝たきりなのか、母親の貧困家庭に、無職になっている主人公の綾野剛が出会うのだが、きっかけはパチンコ店でふとしたきっかけで出会った貧困家庭の弟役の菅田将暉が、家に連れてくると、そこに姉役の池脇がいたという出会いから、男女としての関係性の部分は始まる。池脇は菅田がたまに仕事をくれる社長の高橋と不倫して、弟の仕事を貰っているような関係で、昼は塩辛工場で働いてもしている。貧困のために仕事を選ばない状態の女らしい。複雑ではあるが、そこに綾野が出てきて揺らぐということか。池脇は夜の性接待の仕事もしている。綾野も石材採掘の仕事中の事故でトラウマを持ち、ぶらぶらしている役らしい。綾野は『八重の桜』での松平容保のイメージが私はついてしまっている。だからこの映画は全然違うような人である。菅田将暉も『女城主 直虎』で井伊直政をやったのでみたが、『ピンクとグレー』も最近みて、特徴のある俳優だなと思っていたが、これにも出ていた。この作品のほうが早い。池上は誰にでも体を与えてしまう難しい女だが、気持ちは綾野にあり、「私と結婚でもしたいの?バカだと思われるよというセリフの後で、綾野は厳しい表情をする。高橋も菅田をかわいがってはくれるし、池上のことも思ってはいたりと、悪人の中にも複雑な面をみせるようだが、不気味に見える。
菅田は無邪気である。何をしたのよく把握できなかったが、仮釈放中なのだが、無邪気で悪人という感じではない。貧困のためという設定はあっても売春婦である女に関わっていく男。難しい局面だと思う。しかし女は、新たな男に出会ったことで揺らぐ。男は女の性接待居酒屋で、「ヤマで一人死なせたんだ。俺そいつに急げやって言ったんだ」「だから私みたいな女でいいんだ」「違う。もうこんな仕事(売春)やめれや」「わかんないんだよね。私には、まともな仕事もしたことあるけど、毎日会社いって毎日飲みにいっても、いるとこないんだよね。私には。そういうの。わかんないっしょ」という会話をする。女の本心はわからないが、男に私みたいな女と付き合うなという気持ちからそういうセリフを吐いたのかどうか。ウィキペディアには、綾野も菅田も仮面ライダーシリーズがデビューらしいとか、綾野は役作りで北海道の居酒屋で飲んだくれながら撮影に臨んだとか、菅田も映画やドラマでかなりの体重の増減を繰り返したなど出て来る。綾野と菅田は義兄弟にもなっていないが、つるんだりしている。変だが、いいコンビにみえる。と思ったら、不倫社長の高橋に綾野が会いに行く。綾野は池脇と別れてくれと高橋に行って、取っ組み合いの喧嘩をする。「みっともねえことやめねえか。」高橋に殴られ、綾野は口内を強く出血し、高橋の顔に血がかぶる。「家族を大事にしたらどうですか」「大事にしてっからおかしくなるんだや」。これは難しいセリフだ。意味がない場合もあるかも知れない。菅田は「仕事無くなっちまったじゃないか」と怒るが、綾野が「一緒にヤマに入るか」というと喜んで、「飲もうぜ。達夫(綾野の役)」とはしゃぐ。そこまでして、女を売春婦から抜け出さそうとした男だったのに、よくわからない映像ながら、脳梗塞かなにかで性欲だけある父親に肉体を与えているようなシーンがあった。これは衝撃的なシーンだが、そうだったのかよくわからない。その後、池脇が外に出てきて、喧嘩を「いい年こいて」と綾野に言って泣く。
綾野の役はハードボイルドに近く、女と寝てしまうので少し違うが、汚れてしまった女と家族を持ちたくなったということで、人を死なせてしまったと思っているトラウマのあるヤマに女の弟も連れて戻ろうとする。女もその弟も、救い出そうとする存在の出現だったかも知れない。食堂で綾野と池脇と菅田が集まるシーンは束の間の暗い背景の中での明るいシーンだったのかも知れない。男たちは仕事を選び、女は、不倫も売春も解消できそうだというシーンで終わっても良かったのかも知れないのだが、それなら救いの物語ともとれそうだが、それでも中途半端か。どうなるのか。暗い部屋で綾野と池脇がスイカを食べながら、「ヤマ入る前にさ。亡くなった人のお墓詣りに行こう」と池脇が語ると、綾野は泣き、「ありがとう」と返す。この男女の場合は、性愛は先に走ってしまったが、心からわけありながらも結婚しようとする気持ちはあった。複雑な時代が、田舎の1980年代なのか、あった。そしてセックスシーンになってしまう。ここら辺は複雑な日本映画というものだった。婚姻届けは出していないが、心から結婚しようとしている男女ではある。しかし、ここがドラマの難しいところで、そうしたシチュエーションにしなくても、婚姻届け後に性愛をすることも可能なのである。
これは至るところ、小説や映画に於ける問題点だろう。女性の監督による、セックスシーンの見せ方というのはどういうものかというのもあるかも知れない。小津安二郎や黒澤明はセックスシーンは露骨にしない名監督だと思う。映画監督にしても時代の感覚は劣化しているのか。原作者の佐藤は自殺している。こうした原作を書くというのが複雑なのか。高橋は池脇の後をつける。「腐ってんのよあんた」と言うが、「いいから乗れや」と言われて、車に乗ってしまう。仕事はくれたが、結局は
悪い不倫男だろうか。このシーンの音響は不気味で、背景も暗い。なぜ女は不倫男の車に、新たな男と約束した後に乗ったのか。高橋が「お前がいないとやってられないんだ」と言う。「どっかの店にいけばそんな女はいくらでもいるよ。早く済ませてよ」不倫関係の男女がカーセックスを始める。双方が醜い顔をしながらの汚いセックスを始めるが、女が泣きだして抵抗してしまう。男は何度も女の顔を殴る。殺したのかと思ったが、その後、顔の腫れた女が夕日の海を一人みている。これで不倫男との関係が切れたのだろうか。女はぎりぎりのところで自分を見失っていなかったのだろうか。男のほうも復帰しても爆発物を岩石に仕掛ける危険な仕事だ。そうした暗い拝啓にも、祭りのシーンが現れる。だが背景の音楽は暗い。高橋は町の人たちと何事も無かったように談笑している。音楽の不気味さから、菅田が祭りに入ってくる場面で悲劇を予想させる。姉を馬鹿にして殴ってなぶりものにした社長に弟は激高してしまう。祭りの中で弟は不倫の社長の腹を刺す。仮釈放中でもあったのに。弟は逃げる。家では母親が泣いている。綾野が拓児(菅田の役)は。と聞く。千夏(池脇の役)に、大丈夫だからと言って、街を探す。法治国家は、悪い人間をも法律で戦わないと不利になってしまう世界なのである。刺してしまうと、いかに正義感があっても悪者にされてしまうのである。弟は逃げるしかなかった。母と娘は泣くしかなかった。男は探した。弟は男のアパートの玄関で座り込んでいた。弟が笑いながら「達夫。タバコくれ」というと、男は弟に殴りかかった。そして肩をゆすった。一緒に座り込んだ。そして弟にタバコを差し出した。弟に至っては性関係の話は一切出ていない。正義に出たほうが法治国家は不利になる仕組みも持っているから、ドラマや映画にして抵抗するしかない面もある。セックスシーンのある映画ゆえにさらに複雑な事をしている。高橋の社長は死んでないという。「達夫。俺はもうヤマいけねえや」と泣く。「父ちゃんや母ちゃんや姉ちゃん。喜ばせたかったのに。俺もうなんもできねえんだよ」男は弟の肩を抱く。自転車で二人乗りして、これも法律ではだめだが、交番の前に行く。弟が手をあげて、にこりとして
出頭する。男は見送って去る。夜が明けかかっている。厚い曇りである。男は妹に手紙を書いていた。妹は、ナレーションで、お兄ちゃんに家族が増えるのがうれしいと返信するが、なぜなのか、池脇は父親の首を絞めて殺そうとしている。そこに綾野が帰ってくる。間一髪で寝たきりの近親相かんを予想する父親は助かる。もし殺していたらさらにどうしようもない所だった。画面がほとんど真っ暗にしてわかりにくい映像にしている。父親は男女に対して何か語ろうとするがわからない。女は泣き叫び、男は涙を浮かべる。そして外に出る。北海道の海の音が聞こえる。朝日が顔を出している。女は振り返り男を見る。顔には殴られた社長からの傷跡がある。泣いたような笑ったような複雑な表情を浮かべる。男は厳しいようなにこやかなような顔を向ける。そして寄りそう。そのシーンは綺麗だ。2014年のキネマ旬報のトップの作品。なぜこんなに複雑に生きねばならなかったのか。表向き優しい父と主人の顔をして羽振りよく貧困地域で開発をしながら、不倫に売春せざるを得ないように思いこんでしまったいた女を引きずり込む社長。それに対して、人を死なせたとトラウマでぶらぶらしてしまいながら、一つの家族と出会い、それを助けようと思ってしまった男。
しかし、それでもその男はそういう関係がうれしかった。運命は人に翻弄されるが、救いは人でもある。汚さと聖なるものが混在している社会。静かなピアノの音色で映画は終える。こうした社会だから悲しく美しいと思ってしまう映画である。だからトップにはなる。だが、社長と女が不倫関係でもない関係はあるし、婚姻届けを出しての順番も実際にはあり得る。トップの作品で考えさせられるとしても、私はあえてこうした映画への評価は下げるしかないのだ。
スカッと
タクジがベンツの社長を刺したところでアドレナリンが出まくりました。タクジは山に行ったら死ぬー!と思いながら観ていたのでスガスガしく出頭できてよかったーと思いました。面白かったッス。
人生の希望を連れてくる光か。
鉱山の仕事で活躍する現実世界に戻ろうとする達夫と、再貧困の現実世界からの脱出が図れない千夏・拓児。この人間の組み合わせが、悲劇に悲劇が重なる重く暗いストーリーを織り成します。一縷の望みを描き、それを破壊する物語の酷さに胸が痛む。この世界に希望なんかない、幸福なんか絶対に訪れないという気分にさせられる。
最後のシーン、二人を照らす朝日が、人生の希望を連れてくる光だと信じて幕を閉じる。
まず、キャストが良かった。 綾野剛も池脇千鶴も素晴らしいけど、やは...
まず、キャストが良かった。
綾野剛も池脇千鶴も素晴らしいけど、やはり菅田将暉に注目してしまう私……。
あんな素晴らしいルックスなのにかっこよく見えない、ダサく見えるのはほんとすごい。
全体的に暗い重苦しい雰囲気だけど、登場人物は皆家族を大切にしてたり仲間を想っていたりと、思いやりのある人達。そんな人達が社会的には底と言えるところで生きていこうと必死にあがいてる。
この雰囲気だったから、ラスト後味悪いやつかなあと思ってたんだけど、あのラストで良かった。
色々あったけど、みんな前を向いていくような、希望を感じられるラスト。綾野剛の笑顔良かったです。
この映画の特徴として性的な描写が多くあるが、目をそらしたくなるような、胃もたれするような生々しいシーンになってる。それがまたリアルで。目をそらしたくなるようなものもしっかり描いてるのが良い。
あと池脇千鶴の家族。私の家族がああだったら、絶対に家を出ていくし、重荷に感じて関わらないようにしちゃうと思う。何とも言えないあの汚らしさというか、家に漂う空気感というか……。うまく表現出来ないんだけど、ここに居たくないって思っちゃう空気が漂ってて、負のオーラというか、ホームレスの人がまとっている空気と同じものをあのお父さんとお母さんから感じる。素晴らしい。
そんな家族を捨てないで自分の体を削ってるというのは、私だったら耐えられないし、こんな家族いなければって思っちゃうのは当然だと思う。足引っ張られてる、煩わしいと思ってしまうと思う。ちなつはすごい人。でもやっちゃいけないことがあって。
人を助けるっていうのは愛がないと出来ないことだなあと思った。たくお?は愛のある男だ!
うん、全体的に良かったです。
あなたには希望のにおいがする
そこのみにて光輝く
タイトルに相応しい映画でした
映画の中ですごく「目」が印象的でした
見開いていた目や、松本が失った目、すごく印象的でした
達也と千夏が海で抱き合うシーンは美しかった
特別海が綺麗な訳ではないのに、
やはり無条件で愛し合う男女は美しいんだと感じさせられました
真っ当に生きることができたら
他の人たちみたいに生きることができたら
どれだけ楽だろうか、救われるだろうか
みんな、不器用でもどかしい
綾野剛さんはこういう役の方が好きだな
口数が少なくて、無気力で、タバコをふかして
すごく似合ってたし、素敵だった、かっこよかった
火野正平さんの出演してる映画は初めて観たかもしれない
"芸能人プレイボーイの元祖"
彼の演技を観ることができて本当によかった
原作の佐藤泰志さんは41歳の若さで自ら命を絶った
彼の唯一の長編小説
彼もまた、きっと生きるという事に苦悩していたのではないか、そう感じました
微妙です
どのキャストも好演が光り、起伏の少ない人間ドラマでありながらラストまですんなり一気見できてそこそこ良作だと思う。
ただ見終わって考えて引っかかっる点がとりあえず二つ。
一つは、普段そのような店に足を運ばない男がたまたま一度行ったら再会してという設定がどうにも都合良すぎる。
女の側でもさすがにすんなり信じれない話でしょ。
せめて通りで見かけてつい追いかけたら…とかのほうが良かったのでは?
それから物語後半は造園屋社長に一方的に弱味を握られているかのような展開で話が進むが、普通この構図でそれはない。
大事な家族に長年の浮気をバラすぞと一言言ってしまえば済むし
そもそもそんな弱味を抱えた者が強気に出るような真似をするはずがないのでは。
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