「そして、生活はつづく。」WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常 Opportunity Costさんの映画レビュー(感想・評価)
そして、生活はつづく。
非常に良かった。
丁寧な構成、豊かだが諄くない映像表現。
そして役を体現した俳優陣。
これらが話への没入度を高め、全編通して素直に楽しめました。
まず丁寧な構成。
特に作中で登場するモノの使い方、多面的な役割の担わせ方が非常に巧かった。
或るモノが話の進展に応じて複数回その意味合いを変える。
物言わぬモノが状況に応じて登場人物達の動機や気持ちや成長 等を雄弁に語る。
その表現方法にグッときました。
また映像表現も豊か。
伐採場面は実際に樹を切っているため臨場感が段違い。
チェーンソーを使っている際の高い音や粉末の飛び散り具合も良かったですが、樹が倒れた…という瞬間の振動。
迫力ある地響きを体感することが出来ました。
台詞での過度な説明をせず映像で魅せる/伝える表現方法も良かった。
勇気の成長や神去村の面々との関係性も映像で自然に表現。
後々の伏線となる事物に対して「これが後々大事になりますよ」と不自然な強調をしない点も好感を持ちました。
あと勇気が街と神去村の間を移動する際のコマ撮り映像表現も好きでした。
勇気の人生が今動きだしているような印象を持つと同時に、街と村の余白部分の違いや周りの人間の違いも見えて楽しかったです。
そして俳優陣も良かった。
主演の平野勇気を演じる染谷将太の顔。
無関心で不貞腐れた、寝惚けたような顔から始まり。
話が進むにつれて徐々に目が開いてきて表情豊かに。
勇気の成長が表情でも表現されていた点が良かったです。
個人的には“口を尖らせた”顔が最高に合っていました。
また飯田ヨキを演じる伊藤英明。
本作の登場人物のうち最も印象深い人物であり、登場時の手鼻の見事さで心を掴みそのまま全編通して大暴れ。
真直ぐな、時として真直ぐ過ぎるヨキという役を伊藤英明が体現。
鍛え上げられた体、そして伐採場面で滲み出る自信や安定感が人物に納得感を与えていました。
嫁との生々しい遣り取りも含めて非常に良かったです。
その他、神去村の面々は皆安定感があり。
神去村に昔から居たような気持ちにさせる生活感が出ており話の没入度が高まりました。
後の世代で伐採可能となる樹を今日植える林業を通して連綿と続く人間の営みが描かれる本作。
笑って、泣いて、そして笑って。
素直に楽しめる作品です。
オススメです。