「WOOD JOB!GOOD JOB!」WOOD JOB!(ウッジョブ) 神去なあなあ日常 ロロ・トマシさんの映画レビュー(感想・評価)
WOOD JOB!GOOD JOB!
文句なしの面白さでしょう。間違いないですよね。
物語が凄い丁寧なんですよ。人間模様も展開も伏線も本当に丁寧。毎回ニッチな題材を掘り起こして、それをしっかりとしたテーマに据えてくる矢口監督の手腕が存分に活かされております。ある意味で監督のひとつの到達点みたいな作品なんじゃないでしょうか。
今迄の手法は踏襲しつつ、でもいつもなら現実からハミ出ちゃう程にスラップスティック調にやり過ぎちゃうドタバタノリを、今回はバッサリ削ぎ落として、リアルから余り剥離させない物語運びにしてますね。しかしそこにコメディタッチな味付けも絶妙なさじ加減でちゃんと入れてくるし、何ひとつ破綻させず無理なくストーリーを紡いでいるというか。しっかりと丁寧に映画こさえたなあ、という印象です。いやね、本当そうなんです。丁寧。今回はマジに丁寧なんですよ、さっきから何回も言ってますけど(過去作品の出来が大雑把て意味じゃないですよ)。
まず何が丁寧か、というと、主人公ですね。染谷将太君ね。
彼が演じる主人公平野君は、少しヒネらな過ぎるぐらいに今時な若者のステレオタイプというか、ゆとり世代無気力青年の代表格的なキャラクターです。だからちょっとは複雑性というかキャラ設定をヒネればいいのに…とも思ったんですよね、最初は。でもね、観てくにつれ、敢えてそういうキャラ造形にしてるんだ、と分かって来るんですよ。
無知な彼の目を通して、我々にとっても馴染みのない世界を見て行くことになるんで、彼が観客側を代表してるというか、つまり案内役になってくれているというか。やたらと個性的でない分、彼が物語進行の妨げにはならないんですよ。平野君が疑問を感じれば、彼がちゃんと口に出して職人さん達に訊いてくれるし、KYでかなり無神経な質問とかも吐いちゃったりするんだけど、それに対してもしっかりと相手側からレスポンスがある(そりゃ叱られたりするけど)。そういう分かり易さも非常にイイんですね。
で、ジャンルは『青春林業エンターテインメント』と言うぐらいですから、今回のテーマは文字通り『林業』です。勿論、木に登ったり木を斬ったり木を植えたりする訳ですな。する訳ですが、そこを全面的に押し付けてないんです。物語の流れに沿ってちゃんとバランス取ってますね。
壮大な山々とそれを覆う木々。青々と繁る草木。小川。突発的に振る大雨…といった自然の雄大さや、村の人達との交流、その時々で偶発的に起こる事件、クライマックスの大きなイベント。それらにブリッジ的な役割で林業というテーマが機能するんですよね。
いや、ね。もう完璧じゃないですか。ここまで丁寧だと。本当に楽しかったです。少しも淀まず、中弛みすることもなく。
文句なしの面白さでしょう。間違いないですよね。いやほんとにほんとに。