「ベストセラーに通じる普遍のテーマ」猿の惑星:新世紀(ライジング) 中野祐治さんの映画レビュー(感想・評価)
ベストセラーに通じる普遍のテーマ
旧シリーズから続く世界観を現代的に描き直した『猿の惑星』の新章として、『新世紀』を観ることにしました。前作を踏まえた物語がどのように展開していくのか、そして人間と猿との関係がどの段階に差しかかるのか、その変化を確かめたいと思ったのが理由です。
特に印象に残ったのは、人間と猿との間にある「共存」と「対立」のはざまの緊張感です。前作で知性を持つようになった猿たちは、独自の社会を築き、シーザーを中心に秩序を保っていました。一方で、人類は崩壊した文明の中で生き延びるために必死であり、両者は微妙な距離感で接触します。ベストセラー小説のように普遍的なテーマが描かれつつ、シーザーのリーダーシップや仲間を思う気持ちが強調され、物語に厚みを与えていました。特に、シーザーと人間の間に信頼関係が芽生えそうになりながらも、誤解や裏切りによって崩れていく様子は、観ていて胸が締めつけられるようでした。
この作品から学べるのは、異なる立場にある者同士の信頼構築の難しさと、その大切さです。ビジネスの現場でも、相手が顧客であれ取引先であれ、価値観や利害は必ずしも一致しません。だからこそ、表面的な利害調整ではなく、相手の立場に立って考えることが必要になります。小売りやコンサルティングの経験でも、信頼を築くのに時間はかかりますが、それが崩れるのは一瞬です。まさに映画の中で描かれた緊張関係と同じだと感じました。
『猿の惑星:新世紀』は、単なるSFではなく、人間社会に通じるテーマを描いた作品です。対立を超えて共存を模索することの価値を、強く実感させてくれました。
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