「これを観たら簡単に「ヤバすぎる人生」なんて言えなくなる」ウルフ・オブ・ウォールストリート マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)
これを観たら簡単に「ヤバすぎる人生」なんて言えなくなる
3時間もある長尺だが、観ればこれ以上切りようがないと納得する濃縮されたジョーダンの生きざま。
たった10年の間に周りの誰よりも多大な富を得、湯水のごとく金を使いまくり、ドラッグに溺れるジョーダンの人生。所詮、成り上がりの馬鹿な行動と見るのは簡単だが、たった一度の人生をあそこまでハジケさせたら本望だろう。
狂気の沙汰を演じさせたらディカプリオは超一級だ。あの淀みなく流れる話術、とことん行き着くところまで突き進むバイタリティ、己自身に陶酔しやがては破滅へと向かう形相、「J・エドガー」あたりからディカプリオは二段目のロケットに点火した感じがする。
法をかいくぐったビジネスだけでなく、四六時中ドラッグと酒浸りで、やることなす事、常人には計り知れない行動が大爆発。とくに、ランボルギーニの迷走、大型クルーザーの無謀航海、ファーストクラスでの乱行は最たるもので、呆れるを通り越して笑ってしまう。陸はもちろんのこと海へ空へと、まさにヤバすぎる人生とはこのことだ。
家庭人としては、何事も無難にこなし無事に家路につく夫が理想だろう。ただ、誰しもがそれだけで人生いいのか?と自問するはずだ。すべてを失い収監されたとしても、想像の枠を超えた体験をした男に一抹の羨望を覚えたとしてもおかしくない。
堅実という名の壁のどちら側に立つか、やはり人には持って生まれた分というものがある。望んだからといって、誰もがジョーダンのように破格の人生を手中にできるものではない。ましてや、ジョーダンがやってきたことは法に背いた犯罪だ。
それが分かっているから着実に道を歩く人間が大勢を占める。家路を急ぐ地下鉄の車中、これでいいのだと自分を納得させる。デナム捜査官の目が、万人の思いを象徴する。