タンゴ・リブレ 君を想うのレビュー・感想・評価
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男二人のタンゴ。 ダンスのイメージが一新。 ここだけでも必見。
「タンゴは魂の踊り、~、自分の本性が表れる(予告より)」そうだったのか、だからこうなのね。
ラスト。斜め上行く展開。
はははと笑いしかなくなるのか、ふざけるな!と言いたくなるのか、乾杯したくなるのか、観る人次第。
なんなんだかなあ、という登場人物たち。
それが、長男が動き出してから、緊張がはらみだし、そしてあの…。
それまでどうでもよかった、勝手にやってくれよと半ば思いながら観ていた人々が、エンディングが流れるときには、気になって、気になって、つい考えてしまう。「この後、どんなふうにやっているんだか」
私史上、最強のラストの一本になってしまった(あくまで、一個人の感想です(笑))。
冒頭も好きです。
罪を犯して逃げる二人。思いもかけず成り行きで殺してしまった戸惑い。そして殺された方の若き警察官。撃たれてから息が止まるまでが、殺したドミニクの顔と交互に映し出される。そこに被るやるせなくも切ない歌。一瞬たりとも目と耳を離したくなくなるシーン。
そこから、刑務官の場面になる。変わらずに繰り返される味気ない日常。そこに、活性化をもくろんで始めたダンス。というと『Shall we dance』を思い出すが、趣は全然違う。刑務官の生活は徹底的に無味乾燥・不器用極まる。
そして刑務所の場面になり、冒頭のドミニクたちが登場。奇妙な関係。ファムファタール。その息子。
そんな男四人とファムファタールの関係を軸に、
タンゴが彩を添える。
彩を添えると書いたが、男4人とファムファタールのやり取りよりも、タンゴをめぐる展開の方がひきつけられてしまう。男二人で踊る場面、刑務所の皆で練習する場面。つい体が動きそうになる。ダンスの場面は複雑かつ高度で真似なんかできやせぬが、練習場面は同じようにやったら、いつかあのタンゴが踊れるかなという大それた思いを抱きそうになる。そんな思いだけでなく、練習のステップ自体が格好いい。
なんて、タンゴに魅せられていると、あれよあれよと破滅の道へ。息苦しくすらなってくる。
と、その息苦しさがMAXになった段階で、ギャグのような展開へ。冷静に考えると、その展開すら破滅の道をまっしぐらなのだが、計画性に縛られた人生を送ってきたであろう人物の、子どもじみた計画性のない行動を見ていると、「これでいいのか?…これでいいのだ」と言いたくなるようなラスト。しかもここで終わるか?
ラストまで鑑賞して、監督は何が言いたかったんだろうと、今までの展開をすべて覆された感がありつつ、「リブレ=Free」、人生なんて計画通りにいかないよね。そこで生まれるなにかもあるよね、と笑ってしまう。
たぶん、心がちょっと疲れていて、かつちょっとの心の余裕(隙間)が、ある人しか受け入れられないだろうな、と思う。
心が一杯一杯の時に観たら、なんだよこれ、時間返せぇ~とちゃぶ台返ししていただろうな(あくまで、一個人の感想です(笑))。
ドミニク(演:アムネッケル氏)がいい。他の役も観てみたい。
フェルナン(演:ロペス氏)は、あの『パンズ・ラビリンス』で恐怖の大王ビダルを演じた方。ここでも(ビダルとは違ったキャラで)決めてくれます。
息子アントニオ(演:シャセリオ氏)はデハーン氏に似ている。それも儲けもの。
JC(演:ダミアン氏)とアリス(演:パウリスヴィックさん)は、なんだかなぁの極致だが、あの微妙なキャラをしっかり演じてくださったからこそ、このラストが効く。
とはいえ、やっぱりこの映画での立役者は、あのタンゴを踊ったフルンボリ氏とテグリ氏でしょう。このタンゴがなかったら地味な映画で終わってしまったが、このタンゴがあるがゆえに、主要メンバーの関係性すら艶めいたものに見えてくる。
タンゴは偉大だ。
話が弾けまくり。
まさかこういう内容の作品とは思わなかった。
刑務所の看守JCは、いったいどれだけ真面目なんだ?と
思うくらい不器用で愚鈍な男(踏切線で車をバックさせる)。
そんな彼はタンゴ教室に通っているのだが、ある日
アリスという女性が入ってくる。一目で惹かれるJC。
その後、彼が務める刑務所内でアリスを見かける。
彼女は囚人に面会に来ていた。一人は夫、一人は愛人。
うわー何なんだ、この女。もうお終いだねJC、なんて
誰もが思うところだけど、愚鈍でも諦めないJCの粘り。
看守と囚人家族が付き合うのは認められない。
だから、タンゴを一緒に踊るのも実はいけない。とはいえ、
アリスのことが気になって仕方ないJC。チラ見していたら
夫や愛人に気付かれてしまった!ナニ!?タンゴだと!と
怒鳴り散らす夫のフェルナン。いよいよ三つ巴の戦いか?と
期待に胸を膨らませるも、待って!これタンゴの映画でしょ?
と、踊る場面の少なさにちょっと肩透かしを食わされる。
タイトルから期待・想像していた内容とは大違い^^;
だけど、面白くないわけではない。ドラマ性はかなりいい。
タンゴを介して人生が弾けまくる男女の顛末を描いている。
このアリスという女、色っぽいのかな?私的には割と普通、
やや美魔女系?とは思うけど、15歳の息子がいるってのに、
ずいぶんお盛んなお母ちゃんである。そもそも夫と愛人の間
に流れるあの空気はナニ…?ここが最大の謎であり、〆に
明かされる夫の秘密告白によって彼らの関係が露わになる。
しかしタンゴのステップ同様、まったく先が読めない展開。
愛人ドミニクの自殺未遂に端を発したJCの作戦?には彼の
愚鈍行動の結集!?が顕れて笑えることしきり。でもこれこそ
JCが一番やってみたかったことなのかもしれない。
規則の中で生きている人間ほど、規則を破りたくて仕方ない。
あーあ。で終わると思ったラストが、一転するのが楽しい。
とはいえ、何といえばいいのか、ハリウッドや日本ではこんな
雰囲気の作品は観たことないなぁ。と脳が混乱したのは確か。
所内でタンゴを教える囚人役は、有名タンゴダンサーらしいが、
普通に座っている姿はどう見ても悪党!けっこう怖かったよ~。
(あの金魚は15年も生きてないな。もっとデカくなるはずだから)
これは気のいい看守にとって、幸せなのか不幸の始まりか?
脚本も担当しているアリス役のアンヌ・パウリスヴィックが、スレンダーながら美しいボディーラインと相手をじっと見つめる瞳で、体全体からエネルギッシュな色気を発散する。
アリスの夫、フェルナンはアリスに負けないだけの野性的な気迫の持ち主で荒っぽく、看守の目も気にしない。その共犯者のドミニクがアリスの愛人でもあるというのが、この作品の肝。三角関係にはならず丸く収まっているのだ。
彼らに対し、皆からJ.C.と呼ばれる主人公の看守は、一時停止線を越えることもなければ見通しのいい田舎道でも赤信号をじっと待つようなマジメ男だ。しかも気が弱く、号令に従わないフェルナンに注意もまともにできない。
アリスたちとJ.C.の接点となるのがタンゴだが、タンゴがもっと話の中心にくるのかと思ったが、そうでもなかった。タンゴはあくまで話の流れをつくるキッカケに過ぎない。本流は、アリスの奔放さに吸い寄せられる男たちの行く末だ。
とはいえ、監獄の自由時間を使ってのタンゴのレクチャーは見応えがある。
本物のダンサー、アルゼンチンのマリアーノ・チチョ・フルンボリとパブロ・エルナン・テグリが踊るタンゴは、素人目にもキレがよく野性味のある振付で迫力がある。映画には関係ないが、あの脚さばきを見ていると、なるほど同国のサッカーが上手くなるはずだと感心してしまう。
おどおどしながらも、まったく違う世界に引き込まれていくJ.C.に「おいおい、だいじょうぶか?」と声を掛けたくなるが、彼にとって幸せなのか不幸の始まりなのかは曖昧で、何とも足元がおぼつかない風変わりな運びとなる。自分の感覚ではハッピー・エンド。
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