タンゴ・リブレ 君を想うのレビュー・感想・評価
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話が弾けまくり。
まさかこういう内容の作品とは思わなかった。
刑務所の看守JCは、いったいどれだけ真面目なんだ?と
思うくらい不器用で愚鈍な男(踏切線で車をバックさせる)。
そんな彼はタンゴ教室に通っているのだが、ある日
アリスという女性が入ってくる。一目で惹かれるJC。
その後、彼が務める刑務所内でアリスを見かける。
彼女は囚人に面会に来ていた。一人は夫、一人は愛人。
うわー何なんだ、この女。もうお終いだねJC、なんて
誰もが思うところだけど、愚鈍でも諦めないJCの粘り。
看守と囚人家族が付き合うのは認められない。
だから、タンゴを一緒に踊るのも実はいけない。とはいえ、
アリスのことが気になって仕方ないJC。チラ見していたら
夫や愛人に気付かれてしまった!ナニ!?タンゴだと!と
怒鳴り散らす夫のフェルナン。いよいよ三つ巴の戦いか?と
期待に胸を膨らませるも、待って!これタンゴの映画でしょ?
と、踊る場面の少なさにちょっと肩透かしを食わされる。
タイトルから期待・想像していた内容とは大違い^^;
だけど、面白くないわけではない。ドラマ性はかなりいい。
タンゴを介して人生が弾けまくる男女の顛末を描いている。
このアリスという女、色っぽいのかな?私的には割と普通、
やや美魔女系?とは思うけど、15歳の息子がいるってのに、
ずいぶんお盛んなお母ちゃんである。そもそも夫と愛人の間
に流れるあの空気はナニ…?ここが最大の謎であり、〆に
明かされる夫の秘密告白によって彼らの関係が露わになる。
しかしタンゴのステップ同様、まったく先が読めない展開。
愛人ドミニクの自殺未遂に端を発したJCの作戦?には彼の
愚鈍行動の結集!?が顕れて笑えることしきり。でもこれこそ
JCが一番やってみたかったことなのかもしれない。
規則の中で生きている人間ほど、規則を破りたくて仕方ない。
あーあ。で終わると思ったラストが、一転するのが楽しい。
とはいえ、何といえばいいのか、ハリウッドや日本ではこんな
雰囲気の作品は観たことないなぁ。と脳が混乱したのは確か。
所内でタンゴを教える囚人役は、有名タンゴダンサーらしいが、
普通に座っている姿はどう見ても悪党!けっこう怖かったよ~。
(あの金魚は15年も生きてないな。もっとデカくなるはずだから)
これは気のいい看守にとって、幸せなのか不幸の始まりか?
脚本も担当しているアリス役のアンヌ・パウリスヴィックが、スレンダーながら美しいボディーラインと相手をじっと見つめる瞳で、体全体からエネルギッシュな色気を発散する。
アリスの夫、フェルナンはアリスに負けないだけの野性的な気迫の持ち主で荒っぽく、看守の目も気にしない。その共犯者のドミニクがアリスの愛人でもあるというのが、この作品の肝。三角関係にはならず丸く収まっているのだ。
彼らに対し、皆からJ.C.と呼ばれる主人公の看守は、一時停止線を越えることもなければ見通しのいい田舎道でも赤信号をじっと待つようなマジメ男だ。しかも気が弱く、号令に従わないフェルナンに注意もまともにできない。
アリスたちとJ.C.の接点となるのがタンゴだが、タンゴがもっと話の中心にくるのかと思ったが、そうでもなかった。タンゴはあくまで話の流れをつくるキッカケに過ぎない。本流は、アリスの奔放さに吸い寄せられる男たちの行く末だ。
とはいえ、監獄の自由時間を使ってのタンゴのレクチャーは見応えがある。
本物のダンサー、アルゼンチンのマリアーノ・チチョ・フルンボリとパブロ・エルナン・テグリが踊るタンゴは、素人目にもキレがよく野性味のある振付で迫力がある。映画には関係ないが、あの脚さばきを見ていると、なるほど同国のサッカーが上手くなるはずだと感心してしまう。
おどおどしながらも、まったく違う世界に引き込まれていくJ.C.に「おいおい、だいじょうぶか?」と声を掛けたくなるが、彼にとって幸せなのか不幸の始まりなのかは曖昧で、何とも足元がおぼつかない風変わりな運びとなる。自分の感覚ではハッピー・エンド。
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