「変身が反則なのが残念」トランスフォーマー ロストエイジ アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
変身が反則なのが残念
2D の字幕版を見た。トランスフォーマーの4作目である。シリーズ物となると,ジョーズやマトリックスやパイカリのように,後の方ほど作品が劣化するものが多いのだが,このシリーズは,インディ・ジョーンズのように例外的に劣化が気にならない点が特筆ものである。映像は今までの全シリーズ同様非常に見応えがあった。CG の使い方をある意味極めていると言っても過言ではないだろう。実写映画と言いながら,トランスフォーマーたちが絡んでいるシーンはほぼ 100% CG のお世話になっているのだが,実写部分と CG とのシームレスな映像の繋ぎには非常に感心させられた。
脚本は良く練られていて,大人の鑑賞に堪えるものであり,その点が先日観たゴジラと全く違っていた。トランスフォーマーの世界にも人間世界にもそれぞれにドラマがあり,登場人物たちはそれぞれの行動原理を踏み外すことなく活動していたのが魅力的であって,また,予想外の人物や機体が犠牲になるシーンでは本当に胸が痛んだ。
ゴジラとの繋がりといえば,渡辺謙がトランスフォーマーの1体(ドリフト;日本風の鎧兜を着たようなデザインの機体)の吹き替えを英語でやっていたのに驚かされた。ラスト・サムライではかなりたどたどしかった彼の英語も,語りだけで仕事が貰えるまでに上達したのは素晴らしいことだと思った。人間側は全3作とは全く登場人物が異なっており,ターミネーター3でジョン・コナーを演じた猿が主役だったのには最初引いたが,年頃の娘を持つ父親という立場を良く演じていて,見終わった後の印象はかなり良いものであった。だが,格闘家か兵士のような振舞いばかりで,どう見ても発明家には見えなかったので,役作りにはもう一工夫必要ではなかったかと思った。娘役の女優はかつて別作品でラズベリー賞の最低女優賞に輝いてしまったことがある人だったはずだが,これまた見違えるほど魅力的であった。
人間世界での敵の黒幕と思われていた人物が,実はただの悪役でなかったり,物語の舞台が香港に移った時の中国人の描写が非常に批判的であったりと,飽きさせない趣向が盛り込まれていたのも評価できる。ただ,最も残念だったのは,車両形態からロボット形態に変身する過程が,新種のものは一旦粒子のようにバラバラになってしまう点で,変身の面白さが完全に削がれてしまっていたことである。これは,題名のトランスフォーマーという魅力を投げ捨てていたに等しい改悪であると思った。
音楽はこのシリーズの魅力の一つであり,非常に格調が高くて聴き応えのある曲が多数付けられていた。前3作ともサントラを購入しているが,今作も買うことになるだろう。最後に度肝を抜かれたのが,オプティマスが単体で飛行できると明らかになったことである。これには,まるで SW の R2-D2 が突然日本語を喋り始めたくらいにビックリした。この機能があるなら恐竜形態のトランスフォーマーに騎乗する必要などないのではと思われた。そう言えば,恐竜形態のを制圧して服従させる場面も,2発殴っただけと言うのはあまりに手抜きではないかと思えたのだが。次回作もあるらしいので期待しよう。このシリーズは,各作品の間隔が3年以内なので,それほど待つ必要がないのも有難い。
(映像5,脚本4,役者4,音楽5,演出4)×4= 88 点