「苦笑と、ほろ苦さと、温かさでできた映画」あの頃、君を追いかけた(2011) とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
苦笑と、ほろ苦さと、温かさでできた映画
「青春は恥と後悔と初恋で作られる」。そういう、愛おしい映画。
”恥”と”後悔”の部分を、一人で見るか、仲間と見るか、恋人とみるか、子どもをはじめとする家族と見るかは選びたくなるけれど。
踏み出せなかった、一歩。そんな、切ない思い出をくすぐる。
ヒロインがいい。
かわいいだけでなく、これでもかというほど面倒くさそうな表情とか、いろんな場面でみせる、すべての表情がいい。
幼稚なコートン。
お馬鹿度は予想をはるかに超えていて、目が離せなくなる。
それなのに、要所要所で見せる男気。
惚れてまうかは、人それぞれだけれど、チアイーの涙も含めて、チアイ―の気持ちはわからなくもない。
(あの場面で、最初に教官に反発するのがコートンじゃないところもみそ)
台湾映画は意識していなかったけれど初めてだったようだ。
卒業式で流れる蛍の光にびっくりしたり、あんなことをしても退学にならない私立高校にびっくりしたり、警官みたいな教員がいることにびっくりしたり。
また、この場面をこう演出するかという監督の感性もいい。
一人一人が新たな新地に向かう場面とか(表現されている題材が「ん”」という場面もあるので、複雑だが)。
台詞の掛け合いも良い。さすが小説家。
「無駄なことも人生のうち」
否、成果に結びつかないことにだって、これほどの大切な思いが…。
なんて展開にならない。教訓映画ではない。
途中はドン引きする場面もありつつ、
思い出すと苦笑とともに、胸の中に灯がともったような温かさを感じる。
ロマンチックで、歯がゆくて、叫びたくなる。
自分の”あの頃”を思い出してこそばゆい。
「見てよかった」と思える映画は久しぶり。
尤も、R12にしなくていいのか(いや、これ、子どもと見たら慌てる)部分があるから、複雑…。
それも含めて、”青春”なんだけれどね。