「アップル・オブ・マイ・アイ」あの頃、君を追いかけた(2011) 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
アップル・オブ・マイ・アイ
始まってすぐ、背中の部分に青ペンのシミが付いたシャツが映し出されるのだが、もうこれだけで淡い青春を掻き立てられる。
きっと、このシャツの持ち主にとっては、捨てられない忘れられない大切な宝物…。
舞台は台湾中西部の町・彰化。中高一貫の学校に通うコートンはクラスの問題児で、バカ友とつるんでは遊んでばかり。担任の指示で、クラスの優等生・チアイーが監視役に就く。お互い反発し合うが、次第に…。
どの国の映画にも必ずある、お国柄は関係ない普遍的な青春ストーリー。
冒頭の“予感”はそのものズバリであった。
甘酸っぱく、淡く、懐かしく、切なく、温かく。
主人公のコートンがとにかく“幼稚”なのだ。
ジョークのつもりかもしれないけど、自称“俺は天才、俺は二枚目”。
家では何故かいわゆる裸族。何故か気まぐれで勉強する時は鼻にペンのキャップを入れる。
多分真面目に勉強すれば間違いなく優等生なのに、バカばかりやる困ったちゃんだけど、コイツが憎めないんだなぁ…。
優等生でありマドンナであるチアイー。
窓辺で静かに本を読んでるおしとやかな女の子…ではないんだな。
結構気が強い。
桜庭ななみか川島海荷か清水富美加似の、いい感じで普通っぽい可愛さ。
片や鬱陶しい。
片や煩わしい。
しかし、そんな2人の距離が縮まったのが、ある忘れ物。
あの時のコートンがイケメン対応。
幾ら気が強い女子でも、あれはキュンとなるよ。
それからいつの間にか意識し始める2人。
…なんだけど、付き合い始めたかと言われれば微妙。
勿論お互い好意を抱いているのは一目瞭然。
入試に落ちて落ち込んで泣くチアイーを慰める時の2人の台詞。
「こんな時に好きだなんて言わないで」
「好きなのは知ってるだろ」
普通にそのまま付き合えそうなのに、なかなか前に進まない焦れったさ。
そうこうしてる内に卒業となり、別々の道へ。
女子はあっという間に大人になるが、男子はまだバカで幼稚なまま。
擦れ違い、そして…。
1994年から2005年の時代の遍歴。
1999年の大地震は恥ずかしながら知らなかった。
台湾のカルチャーも全く知らんが、日本のカルチャーがちょこちょこと。
特に、日本の○○があんなに台湾の男子共のお世話をしていたとは…!(笑)
コートンとバカ友たち、チアイーと仲良し女子で行った海。クッソ、こんな青春して来なかったぞ!
女性の髪型はストレートが一番好きだが、ポニーテールがあんなにも可愛い。
台湾の人気作家ギデンズ・コーの自伝的小説を自らのメガホンで映画化。
あの日あの時を思い出すような作風なので、2人がその後結ばれるか否かは薄々察しが付く。
ラストのキスの強さはその想いの証。
あの頃、君を追いかけた。
今も君を思い出す。
アップル・オブ・マイ・アイ。
そうそう、冒頭のシャツの青ペンのシミは、チアイーが前の席のコートンにペンでちょんちょんと叩いて呼び掛けたもの。
クッソ、こんな青春もして来なかったぞ!