「仕方がないかもしれないが…」スター・ウォーズ フォースの覚醒 メイフラワーさんの映画レビュー(感想・評価)
仕方がないかもしれないが…
ディズニー傘下のスターウォーズ時代開幕。三部作、その第一弾となる本作ですが、出来は及第点と言わざるを得ません。
まず、所感として良かった点をあげていきます。一つ目、キャラクターですね。ルーカス不在のなか、レイやカイロ・レン、スノーク、キャプテン・ファズマ、BB-8など多数の魅力的な新規キャラを生み出したこと、は評価できます。スターウォーズ作品に登場する人物としては全く違和感なく、すんなりと受け入れられました。
二つ目、演出。流石は経験豊富な監督なだけあって、撮影技法や戦闘シーンの演出等は素晴らしかったです。ライトセーバー戦については賛否両論ありますが、個人的には、製作陣はジェダイに直接教えを受けたわけではないレイやフィン、受けたにしても短期間のみであったカイロ・レンらは、評議会のジェダイほど巧みにライトセーバーを使えるはずもないと解釈し、あのようなスロースタイルの戦闘を演出したのだと勝手に捉えています。
そうしたキャラクター、演出は賞賛に値する完成度でした。しかし、それと同じくらい違和感を覚える箇所があります。
上記に魅力的なキャラとして、フィンの名前をあげませんでしたが、それは、彼については余りにも容認できない部分があるからです。いや、キャラクター自体は良かった。幼少期から、洗脳教育を受け続けてきたファースト・オーダーの兵士。この点は良いのですが、問題は展開上、当然にあるべき彼の内面の葛藤が存在しないことです。
展開に目を向けると、「ファースト・オーダーの兵士であった彼は戦場において仲間が死亡する様を目の当たりにし、恐怖に慄く。そして反乱軍の兵士と出会い、紆余曲折を経て反乱軍としてかつての友人たちと戦闘することになる」
というわけなんですが、本作において、彼がかつて仲間だったファースト・オーダーの兵士と戦うことに躊躇するような場面はありません。そればかりか、その兵士を殺して嬉々とした声をあげる始末。友人の死に恐ろしくなって戦場を逃げ出したのに、その反応はちょっと不自然。
設定自体はよいキャラだったのですが、いかんせん掘り下げや彼自身の苦悩があまり描かれなかったので、仲間を裏切って殺すことにためらいがない気味の悪い人間という立ち位置になってしまった気がします。ファースト・オーダーによる洗脳教育から仲間たちを解放し、自分と同じような目にあう人間を減らすために戦闘するのだという意思表示をするシーン等があれば、印象は変わったと思います。
加えて残念な点が、テンポの悪さですね。かつての三部作を見返すと、面白いくらいに展開が進んでいきます。「あれをやって、これをやって、それがこうなって…」紙芝居のようにとんとん拍子で場面が変わっていきます。限られた尺の中で、あれだけの人物を動かさなくてはならない群像劇ですから、無駄なものはいらない。
それがスターウォーズの優れた点でもあったと思いますが、本作にはそのテンポの良さはありません。一つ一つのシーンが冗長すぎるんですね。そのせいで、話に没頭できない出来になってしまっています。
…と色々勝手なことを述べましたが、ルーカスが関与していないので、かつての三部作のような出来を本作に求めるのはお門違いだろうとも思っています。新体制での製作なのだから、多少の違和は仕方がないと受容するべきでしょう。
最後になりましたが、(拝金主義が裏にあることは承知の上で)、この時代にスターウォーズを新規に製作してくださったこと、関係各者には感謝しかありません。
これからも活躍を期待します…