「追悼、レイア姫。」スター・ウォーズ フォースの覚醒 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)
追悼、レイア姫。
ブロンドじゃない姫君。守られ、助けられるんじゃなくて、自ら行動して解決していく姫君。
今では、ディズニー映画他でおなじみのヒロイン。
けれど、この『SW』が初めて公開された頃は、斬新で、それが話題を呼んでいたような。女の子はおとなしいだけじゃなくていいんだと、その後のキャリアウーマンを彷彿とさせる新時代をイメージさせたキャラクターだった。
ルークじゃなく、ハンソロとの恋模様も、当時としてはビックリ。ハンソロの方が大人の男の魅力満載とは言え、ヒロインは主人公と恋仲になるものだと決まっていたから。最初の公開当時はル―クとレイア姫が…なんてことは明かされていなかったからね。
ある記事で、キャリーさんがレイア姫にキャスティングされた理由を読んで笑った。大スターの娘で周りに命令する姿が板についていたからだって。いじめっ子役のお姫様やお妃は尊大で傲慢だけど、ヒロインのお姫様は周りに優しくかわいらしいという刷り込みがあったけれど、その既成概念も木っ端みじんにしてくれたキャラクター。
『SW』が最初に公開された時、それまでのいろいろな映画の良いところを押さえた上で、さらに、その映像・規模・音楽・世界観、キャラクター設定、USAが日本ぽいものを取り入れている、と何もかもそれまでの既成概念を覆す観たこともないもので、ひたすら驚愕・興奮した。新世界の始まりを予感した。
冷静に考えれば、ストーリーはB級大娯楽作品。でもそこに、当時ささやかれ出した環境問題・資源枯渇がらみの終末思想を背景に、”フォース”という、日本の”道(どう)”や中国の”道(タオ)”のような哲学的な内容が加味されて、とても深遠な、生き方に関わる物語だった。
その後、自分自身が生活が忙しくなり、話も途中参加では理解しづらくなり、いつの間にか離れてしまった。
そして久々に参戦…。
続編を作る意義はあったのか?
そこそこ面白いんだけど、最初に『SW』を観た時の、既成概念をぶち壊されるような衝撃がない。ワクワク感がない。
他のレビューを拝見していると、好評価な方は、内容云々ではなく、新作が出たことで満足している。失われたと思っていた作品が甦ったのだから、四の五の言うなと。
久しぶりに昔のアルバムを観たような。
奥にしまっていた箱を開けて、幼いころに夢中になった絵本に再会したような。
そんな大事にしていた世界がまた動き出す。
愛おしい、大切な世界観を大事にすれば、『SW』の世界観を丁寧になぞっていくしかなく、その点では及第点以上の出来上がりになっている。
けどね… 狐につままれたような展開もあり。
”フォース”って遺伝? 血統主義?
日本の”道(どう)”や中国の”道(タオ)”の世界観は?
魔法や超能力とは違うと思っていたけれど、私の認識が間違っていたのか。
脱走兵。親子の確執。悪の中の善。善の中の悪。
『ハリポタ』と混同しそうだ。
そして衝撃な展開もあり。
う~ん…
そんな中で、その後のレイア姫だけが光っている。現実世界とは違って、男の司令官の下でシンボルになっているのではなく、女司令官というところに祝杯をあげたくなった。
しかも、冷静沈着に判断を下しながらも、周りへの温かいまなざし。若いころの傲慢さは感じさせずに、良い感じに円熟さを増したトップ。
やるじゃん。
と、思っていたら、まさかの演者キャリーさんの死。
これからどう展開していくんだ。他にもたくさん紡ぎだされてきた宇宙戦争物の焼き直しで終わるのか?
筋は似たようでも、描き方によって面白くなる作品はたくさんある。最初の『SW ep.4』だって、日本のあの作品に影響を受けていることは有名。
さあ、どうなる。
とはいえ、せめて、オビワンやヨ―ダの”フォース”が復活することを祈りたい。
だって『SW』なのだから。