ビザンチウムのレビュー・感想・評価
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今までと趣が違うヴァンパイア・ムービー
お互い、ヴァンパイアになった時から歳をとらなくなっているので姉妹にも見えるクララとエレノア。
エレノアを演じるシアーシャ・ローナンは、独特の瞳の色で、哀しい運命を背負った少女にぴったりだ。
クララのジェマ・アータートン。この人ほど役によって印象が変わる女優はそうはいない。品のある美人に見えたかと思えば、次の作品ではソバカスも隠さずその辺のアバズレになっていたりする。汚れ役も厭わず、とくに女優の生命である顔が誰だかわからなくなるぐらい血みどろな役でも平気でこなす。
この二人が、なぜヴァンパイアの道に足を踏み入れたのかが物語の核となる。
いっぽうで、一般的なヴァンパイア映画とは趣を異とする設定が目を引く。
太陽や十字架を怖がらず、日常生活を送る上で必要なお金を稼ぐ現実的な一面を見せるところが面白い。しかも彼女らに噛み付かれてもヴァンパイアにならない。200年生きてきたという設定では、その内容から「ぼくのエリ 200歳の少女」に軍配が上がるが、ヴァンパイアの常識を覆した点は目新しく評価できる。
これでタイトルの「ビザンチウム」がもっと活かされていたらよかった。古代ギリシャで植民者の手によって建設された都市と同じ名前をもつゲストハウス。ここを舞台にしてはいるが、映画の内容からいうと別にどんな名前でも構わない。「ビザンチウム」でなければならない理由付けがはっきりしない。
宿の名前かと思ってたら…
宿の名前かと思ってたら、剣の産地の名前だったとは!
バンパイアなのに剣で死んじゃうのか~♪
『インタビュー』ほどのポップな美しさはなかったように思ったのですけど、シアーシャ・ローナンちゃん演じる 慈悲深い(^^! ヴァンパイアが可愛くて悲しくてなかなか良かったです。
おなじヴァンパイアの母親との性格の対比、反発ながらも母子愛強し、という部分がよく描かれていましたが、ラストのどんでん、私にはなんでこうなるのか今一つ意味不明でした。
ほとばしる愛の物語
『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』よりも美しく
『ブレイド2』よりも強く
『ノスフェラトゥ』よりも危険な
ヴァンパイア映画の傑作である!
そんな強気な煽りも言いたくなるほど面白かった!!!!!
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ニール・ジョーダン監督、ほんっとに喰えないジジイである。
『クライングゲーム』『ことの終わり』では
えぇっていうオチにびっくりさせられたけど、今回もそれに近い。
ケレンミたっぷりのゴシック調、思い切りよすぎのバイオレントが
目眩ましとなって終盤まで展開が読めない。
少女版『ブッチャー・ボーイ』ってことなのか…と自分的には納得しかけたところで
ラストシーンでハタと気付かされる。違うじゃん、全然違うじゃん、これって
ほとばしる3つの愛の物語だ、と。
1つ目の愛は
200年も孤独に耐えてきたヴァンパイア、永遠の16歳エレノアと
難病で余命わずかな青年フランクとの愛。
愛とはその人の総て受け入れる事、フランクはエレノアの特殊すぎる物語を受け入れる事が出来るのか?
二人の初恋であり終生最後の恋でもあるその結末にシビれる。
2つ目の愛は
エレノアと母クレアの親子愛。
クレアの孤独な魂を照らしていたのはエレノアの存在で
クレアからエレノアをとったら何も残らない。
それでも母クレアが下す最後の決断にグっとくる。
そして3つ目の愛。
「貝は腐っても真珠は残る」何だろうこの暗喩。
この秘められた愛が話の結末を大きく変える。
性と暴力に彩られ、ビザールな映像の下に隠された
「孤独な魂を照らすもの、それは愛」…というド直球なテーマに痺れたんである。
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ニール・ジョーダンのファンとしては
監督特有のビザールな映像に悶絶しっぱなしで、もうそれだけで充分幸せで、
下記はわざわざ書かなくても良い野暮な事なんだが、ジョーダン濃度が高いなあと思った点を追記しておきたい。
<赤ずきん>
エレノアが赤いフードを被っているシーンがあり、これってもろ「赤ずきんちゃん」。
ジョーダン監督の『狼の血族』も赤ずきんをモチーフとしており、少女が大人になるまでを象徴的に描いている。
本作の赤いフードや最後の血の滝も、少女が大人になるまでの暗喩だろうか。
本作をヴァンパイア物としてではなく赤ずきん物語として見ても面白いと思う。
エレノア役のシアーシャは、世界で一番「ザ・少女」な女優だった訳だが、本作で大人への道程を演じ「脱・少女」できたのではないだろうか。
<アイルランド>
ジョーダン監督といえばアイルランドな訳であるが…
本作もアイルランドの詩人イェイツの「ビザンチウムへの船出」が下敷きとなっている。
詩の全文を読んでいただければわかるのだが、ある意味、ものすごく詩に忠実に作ってある。
「刹那的な官能を謳歌する若者中心のこの世界で、私に真の魂の歌を教えてほしい」
って、そのまんまである。
刹那的な世界からの船出は、老いと死を意味しているのだろうか。
死を永遠に書き換えるのは、イェイツにとっては芸術であり、ジョーダンにとっては愛だったという事なのか。
エレノアが老人の血ばかり吸うのは、「ビザンチウムへの船出」的でもあり、「赤ずきん」(おばあちゃんは狼に食べられてしまう)的でもあった。
<ブッチャー・ボーイ>
ジョーダン監督の『ブッチャー・ボーイ』が大・大・大傑作だと思う私にとって、『ブッチャー・ボーイ』の女の子版とも思える箇所が本作には散りばめられていて唸ったのであった。
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他にも色々あると思うが斯様にジョーダン濃度が高めな本作、
ビザールな映像を一皮剥けば、芯には実直な愛の物語があり、
是非とも多くの人に観てもらいたいと思うのだが、
芯にたどり着く前に、立ちこめるジョーダン臭にダウンする人もいるだろうとも懸念する。
そんな時は、他のジョーダン作品なぞを観て、身体を馴らしていっていただけたら幸いである。
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