「SPECを根本からひっくり返した堤監督に賞賛を。」劇場版 SPEC 結(クローズ) 爻(コウ)ノ篇 atmさんの映画レビュー(感想・評価)
SPECを根本からひっくり返した堤監督に賞賛を。
あくまで個人の見解なのでご了承を。
まずはクライマックスの考察から。
瀬文が当麻を撃ったことで世界は一つのパラレルワールド、当麻の存在しない世界へと移し替えられた。二つのシャボン玉の片方が割れる演出がそれを象徴的にあらわしている。
佐野元春の歌に乗せて当麻が浮遊しているシーン、これは当麻のいない世界を映していると思われる。当麻のいない世界では本来当麻が存在していたところには別の誰かが補填されていると思われる。そう考えると、この時瀬文が殺したのは当麻の代わりに補填された存在であるいえる。当麻のいない世界でも事件の解決の過程から当麻が消えているが事件解決という結果は変わらない。そう考えると瀬文の殺人という結果も変わらず、瀬文の逮捕も理解できる。少し屁理屈に思われるが、瀬文を逮捕した警官も警官殺しとは言ったが、当麻を殺したとは言っていなかった。
この世界で当麻はあらゆる時間と空間を彷徨う無間地獄にいる。全ての世界を認識するが、誰からも認識されない孤独な存在となる。
瀬文は世界の転換点(パラレルワールドを移動するきっかけになった存在)のため当麻の存在を覚えている。
そしてラストシーン、当麻の腕を瀬文が掴む。確かに瀬文には記憶が残った。しかしそれだけでは無間地獄に囚われた当麻を見つけることはできない。当麻と瀬文、二人の心が世界を超越して繋がったのだ。
世界は一つではない。
そして、想いは世界を越える。
スペックとは人類対先人類の物語ではない。
人と人の想いが起こす奇跡の物語である。
最後の言葉
Someone who loves you must be
CLOSE to you.
『あなたを愛する人は
きっとあなたのそばにいる。』
この言葉が全てだ。