「「劇場版SPEC 〜結〜」を鑑賞して考えた、幾つかの事。」劇場版 SPEC 結(クローズ) 爻(コウ)ノ篇 うろてぃさんの映画レビュー(感想・評価)
「劇場版SPEC 〜結〜」を鑑賞して考えた、幾つかの事。
◆エンドロール直前で、余りにも耳慣れた80年代のバラードが流れ始めたのには正直驚いた。しかもフルコーラス。この作品の一部分が、堤監督の個人的嗜好の基に作られていた事を、改めて思い知らされるシーン。少々長すぎるとは感じたが、残された瀬文の心情を描写するには、適切な選曲だったと思う。
余計な悪役キャラを増やし、設定を膨らませ過ぎたせいで、難解な結末となり、酷評レビューが溢れている。完結を迎えた今、自分も少しだけ感想を述べてみたい。
まず、この作品に引き込まれるキッカケとなった、ニノマエジュウイチについて。TVシリーズのクールな悪役青年が、劇場版以降では軽薄で憎たらしい “おちゃらけボーイ” に成り下がってしまい、爻ノ篇に至っては、どうでもいいエキストラになってしまった事が、とても残念だ。
ありきたりな推理ドラマだと思いながら眺めていた、テレビシリーズの第一話で、時を止める潔癖の青年を初めて見た時は、一体どんな展開になるのだろうと、強く興味を抱いた。あの空気感を持ったダークヒーロー的なキャラで、最後まで引っ張って欲しかった。
そしてもう一つ、この作品における堤監督最大の采配ミスとなった、野々村係長の爻ノ篇を目前にしての殉職について。
有村雅さんとの甘く切ないラブストーリーで、SPECに笑いと癒やしの空気をもたらしてくれた心優しいベテラン刑事を、何故 あのような形で消し去ってしまったのだろうか?
野々村係長は本シリーズの屋台骨であり、ここまでSPECが盛り上がった最大の理由は、野々村係長の存在なのである。
野々村係長の不在が影響し、爻ノ篇においは、適度な息抜きとなる場面が無くなり、ワザとらしいジョークが空振りするだけの、重苦しい流れのままで終わってしまった。(瀬文が砂場に突き刺さる場面にはガッカリ)
野々村係長奇跡の復活劇と、未詳課員の、笑顔でのラストシーンを期待していただけに、不満の残る結末となってしまった。