「しみじみとした味わい」インターステラー 古泉智浩さんの映画レビュー(感想・評価)
しみじみとした味わい
進歩をやめた未来という設定がすごくよかった。軍もなくなり、自動車メーカーも開発をやめたので今とあまり変わらないSUVが走っているのが不自然じゃない。インフラコストのそれほど掛からないネットは生きている。
植物が死滅して地球から酸素がなくなるというのは、どうかなと思った。コンテナみたいなところで栽培する植物もあるので、日本の技術者が人工的に光合成したり、ドーム的なところで砂嵐の影響を受けない農耕作を開発するのではないだろうか。
最初はロケットで宇宙船を飛ばしていたのに、津波の惑星や氷の惑星では小型宇宙船でカジュアルに大気圏外に飛んでいた。特に津波の惑星は地球よりずっと重力があるという話なのに、どうしたことだ。
以前からノーラン監督はその映画で独自のルールを設定して、登場人物はそのルールに悩まされるのだが、今回は勝手に設定した時間の流れで都合よく娘の年齢がギリギリ間に合ったりしていた。確かに盛り上がったのだが、それがノーラン監督のさじ加減ひとつでないように感じさせる工夫をしてほしかった。
そんな独自ルールを臆面もなく設定してくるところにこそノーラン監督の真骨頂があるのかもしれない。この映画でも見ている我々が相対性理論やブラックホールなんかまったく知らないと思ってやりたい放題だ。
氷の惑星で、学者が突然発狂して殺し合いみたいになる。狂った学者が宇宙船とドッキングに失敗して爆死して終わりじゃなくて本当によかった。あの展開はいかがなものかと思う。見ている間はもっと宇宙と向き合えよとイライラした。その後、ちゃんと向き合ったのでよかった。
娘との関係は非常にしみじみとした感動があってよかった。しかしその一方、息子に対してはあんまりだったのではないだろうか。もっと気にかけてあげて欲しかった。
娘も、兄の農作物を燃やすのは、いくらなんでもひどい。
ロボットがすっとぼけていてよかった。娘のメッセージをもしかしたら削除するのかと思ったら、正直にそのまま伝えていたのはよかった。ロボットが裏切るとか、黒幕だったみたいな表現じゃなくても胸をなでおろした。救出された主人公がボロボロのロボットを設定しなおしているところでの、ロボットギャグで外人のお客がゲラゲラ笑っていた。ネイティブはいいなと思った。
宇宙船がブラックホールに突っ込んでガタガタ揺れる場面では、映画館が本当に揺れて、すごい臨場感だった。後で長野が震源地で大地震が起こっていたことを知って驚いた。