「時空を超える愛」インターステラー レントさんの映画レビュー(感想・評価)
時空を超える愛
本編でアン・ハサウェイ演じるブランド博士により「愛」は観察可能な力と語られる。時間と空間を超えて我々人類が感知できるものとして。それはあたかも重力のように人同士を引き寄せあう物理的な力なのかもしれない。彼女自身が遠い別の銀河にいたであろうかつての恋人の愛を感じ取っていたように。
時間と燃料が限られる中で残された人類生存可能な星であるマンの星とエドマンズの星のどちらに向かうべきか。エドマンズの恋人であるブランドは臆面もなく愛する人の星へ向かうことを主張するがクーパーたちは論外だとして相手にしようとはしない。愛情を根拠に科学的な結論を出すなどと。
確かにブランドは私情を挟んでいた。しかし、彼女が愛を根拠に選んだのはけして間違いではなかった。クーパーはまだそのことに気づいていないだけであった。
地球環境の悪化により絶滅が危惧される人類。それを阻止すべく「彼ら」が救済の手を差し伸べる。「彼ら」とは五次元人と劇中説明されるが、恐らく遠い未来の人類のこと。人類が滅んでしまうと彼ら自身も存在しえないので彼らは人類を救済しようとする。
彼らが五次元人たりえたのは進化を経たからであるが、その進化の一歩として重力を操る能力を人類に与えたい。それに選ばれたのがクーパーの娘のマーフだった。彼女が重力を操る方程式を解くにはブラックホールの内部のデーターが必要。しかし、五次元人は現在の人類とは接触出来ない為、クーパーにブラックホールに入ってもらい、そこから娘にデーターを送ってもらう必要があった。
クーパーたちの行動はすべて彼らによって仕組まれていた。クーパーたち人類が愛を根拠に行動することを彼らは知っていたからだった。
空間が重力によって捻じ曲げられるように時間も重力により捻じ曲げられる。重力を操ることができる五次元人たちは時空を操り父と娘に橋渡しをさせたのだった。人類が進化するための技術を伝えるための橋渡しを。
彼らは人間の持つ愛情を利用した。もともと人間から進化した彼らは人類が持つ愛の力を信じていたから。
娘マーフを愛するクーパーはこのままだと地球上の植物が死滅し人類は酸素を失い窒息死してしまう。その被害を受けるのは娘の世代であると知った彼は娘と別れ惑星探査の旅に出る。
先遣隊の向かった星は候補の二つが生存不可能であったため、一度は娘のために地球に戻ろうとしたクーパーだったが、母船のエンデュランス号がマン博士の裏切りで損傷を受けもはや地球に戻ることは不可能となる。彼は一か八かブラックホールガルガンチュアの強大な引力を利用し、重力ターンでエンデュランス号をエドマンズの星へ送る作戦に出る。しかしそれは一度入ったブラックホールから抜け出すために自身もろともレインジャー号を放出する必要があった。
彼は娘との再会をあきらめ人類を救う唯一の方法にかけたのだ。
作戦はうまくいき、ブランドを乗せたエンデュランス号はブラックホールから無事に脱出。そしてクーパーはブラックホールに投げ出されてしまう。
しかしそこは五次元人たちが用意したテッセラクト(四次元超立方体)を三次元に投影した場所だった。そこには娘マーフの時間と空間が並行して同時に存在していた。
クーパーはなんとかモールス信号で自分の存在を知らせようとする。そしてついに彼は腕時計の針を使い娘にブラックホールの内部データーを送ることに成功するのだった。
マーフは重力を操る方程式を解くことができ、ラザロプロジェクトは成功した。地球上の人類を乗せた巨大コロニーは次々と打ち上げられ人類は救われたのだった。
全ては娘を思う父の愛、父を信じ続けた娘の愛が引き起こした奇跡だった。いや、これもすべては五次元人たちが仕組んだものだった。人類の持つ愛という力学を解明した彼らだからこそできたことだったのだろう。
本作の登場人物はすべて愛が行動の動機づけとなっている。五次元人たちは人間が持つ愛情を最大限利用したのだった。
そしてそのおかげで人類は進化を遂げることができ、五次元人となった人類は時空を捻じ曲げ過去危機に瀕した人類を救ったのだった。
愛がこの宇宙の時空を捻じ曲げ不可能を可能ならしめた。そして人類は大きな進化を遂げる。
本作はいわゆるハードSFと呼ばれるジャンル。作品内で描かれたブラックホールなどの描写は現在の最先端の論理物理学により裏打ちされたもの。実際、本作の製作に加わったキップ・ソーン博士は本作公開後にノーベル物理学賞を取るほどの人物。そんな科学者の監修によるハードSFではあるが描かれたテーマは人類普遍の愛の物語。
愛ゆえに人類は救われ進化を遂げることができた。愛こそが人類が探求すべき普遍のテーマなのかもしれない。
十年前の公開時は通常スクリーンでの鑑賞だった。しかし本作のIMAX撮影された映像を堪能するには日本では東京の池袋と地元大阪の109エキスポシティシネマの二館でしか不可能ということで今回念願かないIMAXで鑑賞した。
結論から言うとこれは見ないと後悔するレベル。すでにソフトも購入していて何度か見ているはずなのに今回のIMAX鑑賞はまさに別次元の体験だった。
やはり本作は巨大スクリーンと相応の音響設備で鑑賞しないと意味がない。大迫力の宇宙空間の映像とハンス・ジマーの荘厳な音楽が非常にマッチした大傑作であるとあらためて感じた。
十年前私はいったい何を見ていたんだろう。今回のリバイバル公開にはとても感謝している。できれば期間内もう一度見に行きたい。
レントさん
コメントへの返信を頂き有難うございます。
10年前の作品ですが、決して古さを感じさせないところも本作の凄いところですよね。
リピーターも多そうですね。
レントさん
壮大な宇宙の、壮大なスケールの本作のIMAX上映、至福な時間でした 🎥✨🪐
評価の高い作品は、時を経ても色褪せませんね。若い方も結構来ていらっしゃいました。
おはようございます。
コメント失礼します。
素晴らしいレビューですね!
感動再び!!ありがとうございます!
終始降り注がれる"愛"のシャワーを浴びた、IMAXでの最高の体験でしたね!嬉しかった。24年の良い締めくくりになりそうです。
いや、まだ観たい作品もありますけれどw