ラッシュ プライドと友情 : 映画評論・批評
2014年2月4日更新
2014年2月7日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
瞬間に永遠が込められている、人生が凝縮された映画
F1レーサーの映画である。そのスピード感、高揚感が現実のレース以上に観客の心をつかむようにしなければ、それを映画にする意味はない。手に汗握る、息をもつかせぬ目眩く展開は、まるで映画そのものがF1レースになったかのようだ――そんな感想を誰もが持つような映画に。
この映画がそれに応えているかどうかは、各所から聞こえてくる絶賛の嵐がすべてを語っているだろう。だがそれ以上にこの映画のゆったりとした時間の流れが心をとらえる。早いのに遅いのだ。ひとつひとつのシーンの一瞬一瞬が、スローモーションでとらえられたかのように、心に残る。動体視力が増す映画と言ったらいいのだろうか。瞬間に、永遠が込められている。
逆なのかもしれない。瞬間瞬間という近さではなく永遠という遠さの力、ひとつのレースではなく、ニキ・ラウダ、ジェームス・ハントという名前を持つ人間たちが示す人生の永遠が、この映画のひとコマと一瞬を作り上げる。彼らのキャリアがピークを迎えた1976年、そこから40年弱が過ぎた今だからこそその一瞬を作ることができたのだ。その間に流れた時間の重さ。そしてその重さが軽さを獲得する時間の経過。それらが混ざり合って、この映画の一瞬を作る。同じく76年、カー・アクション映画で映画監督としてのキャリアをスタートさせた本作の監督ロン・ハワードは、そのデビュー作の時点からこの映画を作り始めたのだ。そんなことを言ってみたくなる、人生が凝縮された映画である。
(樋口泰人)