アメイジング・スパイダーマン2 : 映画評論・批評
2014年4月15日更新
2014年4月25日よりTOHOシネマズ日劇ほかにてロードショー
シリーズの結節点にしてズッシリとした充足に満ちた、渾身の大跳躍
何かが大きく変わった。気合いがまるで違う。前作の地道な助走が、いまここで大跳躍に達したと言うべきか。それを象徴するように真昼のニューヨークを駆け抜けるそのスピード感は倍増。そしてスパイダーマンが天に向かって身を投げ出したかと思うと、今度は急転直下のダイブ! このビリビリくる空気圧を受けながら、誰もが本作を、頭ではなく感覚的に肯定せずにいられなくなるだろう。
そこに新キャラによる鮮烈な色彩が加わった。ジェイミー・フォックス演じる怪人エレクトロが夜のNYを大混乱に陥れると、一方、デイン・デハーンも鋭い目線で不穏な空気を醸し出す。そんな彼がやがてグリーン・ゴブリンへと変貌する時、そのあまりの怪演ぶりに、身の毛のよだつのを通り越し、うれしさが込み上げてきた。そう、やっぱりデハーンはこうでなきゃ!
そんな敵との戦闘シーンはカオスに陥らない緻密さが光る。小刻みにスイングを重ねるスパイディに対し、相手も持ち味を活かしたテンポとリズムで応酬。そうやって時にタイム・スライス映像さえ用いながら時間と空間が構築され、まさに観る者が恍惚の表情を浮かべるほどタイトなアクションが、画面一杯に広がっていくのだ。
そして忘れてはいけない。ドラマ性にも味わいが増した。アンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンはドキドキするほど魅力的だし、大人への階段を昇るふたりの関係性がビビッドに紡がれる様は「(500)日のサマー」のマーク・ウェブ監督による面目躍如といったところ。さらにシリーズを貫く「自分はいったい何者か?」という問いかけも胸を打つ。どれだけ本作が多くの伏線を飲み込もうとも、この裏テーマだけはあらゆる要素をしっかりとつなぎ止めて離さない。
映画は今後の展開を示唆しながら幕を閉じる。しかし不思議と次回作が待ち遠しいとは思わなかった。それはこのズッシリとした充足感、いや達成感の成せる技か。その意味でも本作は、シリーズの結節点ながら、ひとつの完成形とさえ言える、渾身の一作なのである。
(牛津厚信)