燦燦 さんさんのレビュー・感想・評価
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毎日がスタートライン
シニア女性が新しい生きがいを見つける話、という点で八千草薫さん主演の『くじけないで』に似たお話ですが、この作品ならではの良さも沢山あります。
特に吉行和子さん演ずる主人公の鶴本たゑがとてもポジティブで若々しいのが印象的でした。
老人やお婆ちゃんである前に一人の女性だと全身で主張しているようにも見えました。
幸せを追い求めるのに年齢制限は無いのだと我々に教えてくれます。
そして、たゑの亡夫修一の親友でたゑに密かに想いを寄せる森口慎二も宝田明さんの好演もあって、心に残るキャラになっています。
慎二はたゑの年齢に似合わぬ自由奔放さにヤキモキしながらも、誰よりも彼女の事を慕い暖かく見守っているのですが、その自分の想いにたゑが気付かない事に更にヤキモキしつつも、そんな関係を大切にしていきたいと考えているのです。
ずっと昔からたゑの事を思い続けているが親友である修一のために彼女への想いを隠し続け、それでも想いを捨てきれず独身を貫き通し、修一の死後も彼への友情と義理のために、たゑへの想いは胸の中にしまったままにしているのです。
男の純情此処に極まり!
そんなたゑと修一、慎二の青春映画のような関係を、この作品では一切若い頃の思い出のシーンを描いていません。
前述の『くじけないで』や認知症の老母と介護する息子の姿を描いた『ペコロスの母に会いに行く』では、若かりし頃の回想シーンが重要な役割を果たします。
それが非常に作品を感動的見せています。
ですがそれは感動の押し売り的なあざとさも見え隠れするように思えます。
その点この作品では回想シーンが殆どありませんので、観客はごく自然な形で物語に入り込めます。
高齢者の婚活を温かく見守る時代
年齢が増すほどに、話し相手が欲しくなるのは当然のこと。たしかに友人も話し相手にはなるが、生活のサイクルを共にする伴侶の存在はまた別だ。
77歳のたゑが、結婚相談所のショーウインドウに飾られたウエディングドレスに見とれる姿は何とも可愛らしく、その姿を見る他人の目を意識してはっと我に返る表情に微笑んでしまう。
この世に本当の自分を知り理解してくれる人がいてくれたら、そう願うだけなのだが、周りの反応は意外に冷たい。いい年をして異性を欲しがる、そんなふうに見られてしまうのだ。
もちろん応援してくれる仲間もいるが、当人に近い人間ほど世間体を気にして、なかなか賛同を得られない。これが現実なのだろう。
第二、第三の人生を歩もうという高齢者は、若者以上に異性との出会いは少ない。今や、4人に1人が高齢者。結婚相談所がこうした年齢層にも目を向けていく時代が来ていることを認識させられる作品だ。
たゑのような高齢者を温かい目で見る時代にしなければならない。
吉行和子は、お婆ちゃんと呼ぶのが失礼なぐらい可愛らしい。宝田明は相変わらずダンディーでかっこいい。さらに、さいたまゴールド・シアターの面々が、作品を明るく和気藹々としたものにした。燦燦。
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