「不満は多いが面白くは観れた」武士の献立 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
不満は多いが面白くは観れた
内容を全く知らずに見始めたので、パッケージとタイトルから、「南極料理人」のようなのほほんとした武士版グルメ映画だと思っていた。
序盤こそそのような雰囲気があったものの、中盤からは加賀騒動に巻き込まれる舟木安信とその妻で主人公の春の、本格とまではいかないが、わりとちゃんとした時代劇で、もちろん悪いことはないのだが少々求めていたものと違った。
序盤は予想以上に面白かったが、終盤は普通の時代劇になってしまって水戸黄門なんかを観ているような感覚だった。
主人公が春では、そもそも武士ではないので、肝心の場面で料理を出来ないことが確定しているわけで、終盤に盛り上がりようもない。
その辺は主演が先に決まっている大人の事情ってやつなのだろうが、そんなことならコミカル時代劇にして春が殿様に突って料理を作っちゃうくらいで良かったのに。
それなりに面白かったので星はサービスするけれど、終盤の本当の不満点を書こうと思う。
新しい食材、料理を求めて能登に行こうとしていた伝内が病に倒れ、代わりに安信と春が能登に行くのだが、そこでの具体的な新しい食材、料理がなんだったのか明らかにされない。
当然、能登の料理が饗応料理のメニューに具体的に採用されたシーンもない。おそらく伊勢海老や塩を使ったりしたんだろうが、全く説明なしはダメだと思う。
当たり前のように安信も伝内も献立を決めるシーンはなく、タイトルの「武士の献立」ですらない。
映画をちゃんと面白く成立させる事よりも、上戸彩をスクリーンに写すことしか考えてない大人の事情の恐ろしさを垣間見た気がした。
結局、能登と上戸彩の単なるPRだったようにも思える。能登はかなり割りを食って尺が短いので、その魅力が伝わったかどうかは微妙なところだが。