「スタローンとデ・ニーロだから成立した映画」リベンジ・マッチ kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
スタローンとデ・ニーロだから成立した映画
2014年の公開当時、〝ロッキーvs.レイジング・ブル〟と、誰しもが思ったし、配給側もそういうパブリシティを展開した。
そう取れなくもない物語だが、ロバート・デ・ニーロは公開時70歳を過ぎていて、流石にデ・ニーロ・アプローチによる肉体改造はできておらず、一方の3歳年下シルヴェスター・スタローンは絞れてはいないが筋骨隆々で、二人のファイトシーンには痛々しさを感じてしまった。
とはいえ、安易な発想のコメディーだったとしても、70〜80年代に映画フリークとなった我等はデ・ニーロ、スタローンを決して否定することはなく、二人の闘いに胸を熱くするのだった。(ジャッキー・チェンも同じ)
特筆すべきは、スタローンより7歳年下とはいえ当時60歳前後だったキム・ベイシンガーの、あの色気だ。
83年『ネバーセイ・ネバーアゲイン』、86年『ナインハーフ』、89年『バットマン』、92年『愛という名の疑惑』、94年『ゲッタウェイ』、97年『LAコンフィデンシャル』などなど、長らく〝美女〟の代名詞だった彼女のポテンシャルは底知れない❗
さて、二人の老ボクサーの因縁には色っぽいベイシンガーとの三角関係が絡んでいて、更に彼女の息子の父親が誰か、なんて重そうな話が軽〜く挿入されるのだ。
最強の座をかけて闘っていたはずの二人のボクサーに水を差したのは“女”だったという、アレレな脚本なのだが、そんなことを感じる余地を与えず決戦に突入できるのは、デ・ニーロとスタローンの魅力に他ならず、『レイジング・ブル』と『ロッキー』という全くタイプが異なる名作ボクシング映画があってこそなのだ。
そういえば、日本でも『座頭市と用心棒』(70年/監督:岡本喜八)という傑作で、勝新太郎と三船敏郎が対峙したなぁ。
現役UFCファイター(当時)のチェール・ソネンが本人役で出演し、スタローンに殴り倒される。
UFCの試合会場で老ボクサーにKOされる役をよく受けたな、UFC主催者もよく許可したな…と思った。
スタローンは『エクスペンダブルズ』シリーズにランディ・クートゥア、ロンダ・ラウジーというUFCのスターファイターを出演させている。
この映画でスタローンはまたまたラジー賞を賑わせることになる。
ラジー賞はスタローンのためにあったのか、スタローンのお陰でラジー賞は継続できたのか、どっちかだろう。
蛇足だが、原題は「Grudge Match」で、未決着の二人が、積年のわだかまりに決着をつけようとする「遺恨試合」を意味している。
「リベンジ」は〝復讐〟という意味だから、カタカナ邦題を訳すなら「雪辱戦」となる。これは雪辱を果たしたい側に立った表現であり、双方から見てリベンジ・マッチというのは成り立たないと思う。
因みに、再戦のことは「Rematch」というが、日本では「リターンマッチ」という言葉を使いたがる。これは、タイトルマッチで負けた前王者がタイトルを取り戻すための再試合を表すので、これも一方の目線の言葉だ。新王者側からだと「リターンマッチを受ける」となる。
エンドロール後にサプライズゲストが登場するが、〝耳噛み事件〟をリアルタイムで見た者にとっては驚きだったし、命がけで拳を交えた者どうしには通じ合うものがあったのかと、喜びもひとしおだった。