「call me grandpa」リベンジ・マッチ しんざんさんの映画レビュー(感想・評価)
call me grandpa
でる作品を選べよ
と勝手にこっちの思いをぶつけて20年、余計なお世話だ、とも言わず、たんたんとウッスイ映画に出続けているロバート・デ・ニーロ。
デ・ニーロが出てるから、というので見に行った映画は、実はスライ初共演の「コップランド」が最後である。その後、「ボーダー」で「究極の夢の」共演に、こっちが勝手に夢を抱いていたことに今更ながらに気付き、ラッセル監督作でちょくちょく見かけても、だから?という程度の感想しか持たなくなった。スターにも考え方があり、人生があり、生活があり、人間関係がある。まあ、それでいいじゃないか、ということで俺は納得している。
一方のスライは、そもそも「フィスト」とか「コップランド」とかが大好きなオレは、その長い映画人生が現在の彼に深みを与え、ようやく、ホントにようやく、浮かばれようとしているように思え、とてもうれしく思う。ラジー賞ノミニーは愛の証だ。
本作、出演を渋ったスライを、デ・ニーロが口説き落としたというが、なるほど、「ロッキー・ザ・ファイナル」でケリをきっちりつけたテーマをも一回、しかもパロディで、となると、それはそうだろう。
まあ、「あの」デ・ニーロの「申し出」に「渋る」日がスライに訪れること自体が、彼の濃密な映画人生を物語っている。
しかし、過程はどうあれ、こうしてできた作品は、内容こそファンタジーだが、スライは、デ・ニーロとタメを張るどころか、デ・ニーロより渋く落ち着いた、ロッキーバルボアでもない、ジョン・ランボーでも、バーニー・ロスでもないキャラクターを、イキイキと演じている。
演技だけでいうと、スライは、デ・ニーロ、およびアラン・アーキン演じる老トレーナーのコミカルなキャラクターに大いに助けられた感はあるが、本気で彼最高の演技だったと思う。
キム・ベイシンガーという「元セクシー金髪」美人との共演も、ほほえましい。
それに呼応してか、デ・ニーロも個人的にはとても懐かしいリズムあるトークでノリノリ。これまで自分勝手に生きてきたやんちゃなジジイを楽しく演じている。
このジジイが、この戦いのあと、孫に言うこの一言がぐっとくる。
そこまでの過程をちゃんとこの映画とデ・ニーロがきっちりと表現しているので、ぐっとくるんだな。
このセリフだけで点数1.0アップ。
追記
デ・ニーロ、スライ、アーキン、ベイシンガー、息子、孫、プロモーター、役者はそろっている。
がしかし、小粒な作品、という印象はぬぐえない。
どうせならもっとお祭りにしてよかったのではないかな、と思ったら、ラスト、意外なお祭りが。
追記2
「遺恨試合」。上映館が少なく、かつ観る人が猛烈に限定されているのだから、本作の「遺恨」という味のある原題を、とは思うのだが、DVD込み、となると致し方なしの邦題なのだろうが、うーん。