「フュリオサが最高にカッコいい」マッドマックス 怒りのデス・ロード REXさんの映画レビュー(感想・評価)
フュリオサが最高にカッコいい
はっきりいって、期待していなかった。
過去のマッド・マックスがもたらした「世紀末」は、水や食べ物はどう補給してるのか?とか、人間以外の動物の存在はどうなっているのか?とか、荒唐無稽で突っ込みどころが多い。それ以降似たような世紀末観を呈示している映画を見るたびに、どこか醒めた目でみてしまう自分がいたからだ。
しかし、今回はそういう余計なことは吹っ飛んでしまった。
(全く戦闘に加担しない音楽隊や、ガソリンを口で挿入するマックスなど、楽しい突っ込みどころは多々あるが)
特筆すべきなのはシャーリズ・セロンの演技力。
演技が必要とは思えないこんな映画だからこそ、説得力が必要なのだなと思った。
脇腹を刺された状態でマックスを支えた、あの極限の表情が忘れられない。
ニュークス演じるホルトも、最初と最後の台詞では顔つきがまるで違う。彼の末路は概ね予測できたが、それでも「俺を見ろ」という台詞は胸が熱くなった。
搾乳器に繋がれた太った女性、隔離された五人の妻、死亡したスプレンディトの腹から胎児を取り出すなど女性軽視の描写も多いが、結局はフュリオサをして、女性がこの世界を正気に戻す一縷の望みとして描かれているのがいい。
闘いを挑む「鉄馬の女」たち、種を守ったまま死ぬ老婆の姿に涙した。
独裁者イモータン・ジョーが、逃亡に荷担した妻たちの教育係を殺さなかったのは、妻を取り戻したあとに必要だと思ったからなのか。
それを考えると、彼の弱点がわかるようではないか。女の私からみても、荒野にたたずむ五人の妻の姿は、この世の宝かと思った。
生きていることを実感したいために生きてる、そんなエネルギーを発散させるかのように疾走する圧倒的なカーチェイス。
CGを多用した爆破シーンを見慣れた私たちは、どこかで本物のスリルを求めていたのかも。エンジンの音、機械の軋み、アドレナリンを鼓舞する爆音音楽隊。棒から飛びかかるウォーボーイズ、特攻隊さながらの手榴弾をくくりつけた鉄棒攻撃。
最高にエネルギーを疲弊する映画。
この時代にこそ、観るべき。