「バカとインテリが同居するアクション映画」マッドマックス 怒りのデス・ロード といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
バカとインテリが同居するアクション映画
マッドマックスシリーズの4作目。前作『マッドマックス サンダードーム』から30年ぶりに製作された続編とのことですが、実は私は本シリーズは本作『マッドマックス 怒りのデスロード』が初見です。全く事前知識も無い状態での鑑賞ですので、前作とのつながりとかは分からない状態で鑑賞いたしました。
結論。めっちゃ面白い。大迫力のカースタント・シンプルながら王道のストーリー・魅力的なキャラクター達。どれをとっても面白い。前作を観ていなくても普通に楽しめる内容になっていました。ところどころ初見分かりづらいところはありましたが、物語の楽しさを削ぐようなノイズにはなっていない気がします。主人公マックスの出自や来歴は劇中で説明が無いまま終わりますが、特に話の本筋に絡んでくることはないので、それが本作の面白さを削ぐ要因になっているとは感じませんでした。私は今、非常に後悔しています。本作を劇場で鑑賞しなかったことを。映画館の爆音大画面で観たかった。
噂に違わぬ面白さでした。ストーリーは非常にシンプルで分かりやすいんですが、情報量の割に台詞が少ないのが特徴的で、登場人物のアクション(表情や行動)でストーリーを観客に察させるのが実に上手い映画でした。バカみたいにぶっ飛んだカーアクションをやりつつも、一つ一つの行動が物語上の役割をキチンと果たしていて、綿密に作りこまれたものだと分かります。これが私が本作を「バカとインテリが同居するアクション映画」と評した理由です。
・・・・・・・・・・
荒廃した近未来を生きるマックス(トム・ハーディ)は、砂漠を支配するイモータン・ジョー(ヒュー・キース=バーン)に捕らえられた。その頃、ジョーの支配に耐えかねた女たちを脱出させるため、女戦士フィリオサ(シャーリーズ・セロン)が裏切り、女たちを連れて脱出した。ジョーは兵を率いてそれを追いかけるが、マックスもそれに連れられてフィリオサを追いかけることになってしまう。
・・・・・・・・・・
世界観が完全に北斗の拳を思い出させますが、北斗の拳の世界観は「『マッドマックス2』を参考にしている」と原作者の原哲夫先生がインタビューで答えていますので、核戦争後の荒れ果てた大地でバイクでヒャッハーするのはマッドマックスが元祖です。
この映画、脚本や演出が凄い。
冒頭に世界観に関する簡単な説明がある以外、説明的なセリフはほぼ無く、マックスがジョーに捕らえられてフィリオサが裏切ってそれを追いかける羽目になるという物語の導入が15分くらいでスピーディに進行します。しかしながらこの15分程度の描写を観るだけで、「ジョーという人物が支配する砦」「貴重な水を掌握している」「ジョーは神格化され、崇拝の対象である」「多くの人間を奴隷のように使役し、虐げている」などなどの世界観が理解できるような内容になっているんです。これが台詞でなく映像でしっかり描かれているのが本当に凄い。綿密に作りこまれた映画であることが感じ取れますね。
そして登場する車の造形が凄い。
何をどうやったらこんな車の造形を思い浮かぶのか分からない、奇抜でイカレた造形の車。しかしそのイカレた造形にもきちんと理由があって、その謎の造形から繰り出される攻撃で主人公たちを追い詰めていく描写が本当に面白い。
そして何よりアクションが凄い。
特典映像を見るとアクションについて「全部実写でやってる」と語っている通り、命の危険を伴うような大迫力のカーアクションは全部実写なんです。車の横転シーンも激突シーンも生身で車に突っ込むシーンも、全部実写なんですよね。本作には死を恐れないウォーボーイズという白塗りの戦闘集団が登場しますが、命の危険を伴うような過激なアクションシーンがウォーボーイズという奇抜なキャラクターに存在感と説得力を持たせていると思いました。
ただ個人的に残念な場面が一つあって、ラストシーンでスピーカーや太鼓を積んだ大型車が横転したトラックに突っ込む描写があるんですが、そのシーンで車の破片と一緒に飛んでくるギターとハンドルが露骨にCGなんですよね。せっかく車同士の激突という大迫力のシーンを実写で撮影したのに、その画面にデカデカとCGのギターとハンドルが映るのは正直興覚めでした。劇場公開時は3D上映もあったので、大迫力の飛び出す演出だったと思いますが、ブルーレイで自宅のテレビで鑑賞した限りでは迫力もそれほど無いし、完全に蛇足だったと思います。
些末な不満点はありつつも、全体的に見れば最高級のアクション映画であったと思います。めちゃくちゃ面白かった!!オススメです!!