劇場公開日 2015年6月20日

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「まだまだ何度も観たい」マッドマックス 怒りのデス・ロード ハルさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0まだまだ何度も観たい

2015年8月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

興奮

V4の後でようやく感想をまとめる気になった。
1回目でもそうだったが、何度観てもフュリオサの背景を思いながら観るのがお約束になったので絶対に泣けるし感動もする。まあ4回目ではようやく落ち着いた感じだけれどヒャッハーは止まらない。それに観るたびにこの作品が恐ろしく丁寧で誠実に作られていることが見受けられて味わい深いのだ。そうした深みはセリフの少なさに由来するところも大きいのだろう。
この作品は無駄を削いでストーリーとアクションを推し進めるが「分かりやすさ」を追求しているし破綻の少ない本や設定があるから、疾走し続ける中でも置いていかれることはない。プロットは単純だが細かな「何故」はそこかしこにあるから見返す毎に解釈が自分の中で変わることがある。素晴らしいのはそれを促す装置がちりばめられているということか。いやよく出来た映画というのはそういうものだけど。
その解釈の変化の一つにジョーのことがある。前述のようにフュリオサへの寄り添いがあるからジョーは間違いなく憎むべき対象だ。「Remember me?!!」のセリフには多くのことを想像させる。
そのジョーが作り上げたコミュニティはいびつではあるが生産性という点では未来志向であり彼が「完全体」を求めてあのワイブスを囲い、汚れていない水や食料を供給していたことが伺える。その健康な完全体こそがこの先の希望になる、と考えていたとしたらそれは頷ける面はある。まあ「Perfect in every way!!!」とか言ってるから危ない宗教っぽい、といういかそのものなんだけど。ワイブスたちの憎悪に満ちた言動からもジョーの行いが非道いものであったことはわかるが、不思議とジョーが死ぬシーンでも本来ならカタルシスは薄い。作中でジョーが非道いことをする描写は無いからね。リクタスにしてもそれこそ無垢な存在だし、ウォー・ボーイズたちは言うに及ばない。果たしてジョーは悪人なのか?という考えも浮かび上がったがもっともらしい理念などがあったとしても自由意志を奪うことは最悪なのでやはりダメなんだと一回りして結論が出た。「Remember me?!!」は本当にグッとくる素晴らしいセリフだ。
個人的には武器将軍や人食い男爵がやられるシーンにこそカタルシスを感じるが、それは奴らが何を象徴しているのかが理由としてあるのだろう。
マックスが砦の場所を地図にしていた際にはじめはフュリオサから隠していた。そしてまた単独行に戻ろうとしていたのだが、あれは一人で砦を奪うつもりだったのだろうか。そうして景色は冒頭と同じになり、また亡霊が語りかける。今度はそれを受け入れることでフュリオサ達を導く決心をする。
ひとえに「生き延びること」という根源的な行動原理によってさまよっていたマックスが自らの名前(魂)を取り戻す物語でもあり、最後に何も言葉を交わさずに目でフュリオサと語り幕は降りる。最高だ。

ハル