17歳のエンディングノート : 映画評論・批評
2013年4月23日更新
2013年4月27日より新宿武蔵野館ほかにてロードショー
人生は“今”を輝かせることの連続である
余命短い17歳の少女がヒロインと聞くと、いくらラブストーリーだと言われても泣かされるのが嫌で敬遠する人もいるだろう。逆に、家族が力を合わせて困難に立ち向かう姿を期待する人もいるだろう。だが、テッサと家族はそうしたお決まりのイメージをものの見事に覆す。彼女が駆け出す街がイラストへ変化するポップなオープニングタイトルが予感させるように、これはまさしく青春ムービー。懸命に治療法を探し続ける父親と、看病も出来ない母親。かたちは違っても娘に迫る現実を受け入れられない両親と裏腹に、過酷な現実を受け止め、残された時間で一生分の経験をしようとするテッサの日々は、思いがけない恋によってキラキラと輝き出すのだから。
父親に対して装うクールな態度がうかがわせる苛立ちと生への渇望も、初恋のときめきも、硬質な空気の中に表現するダコタ・ファニング。「戦火の馬」の純朴さとはまた違う好青年の清潔感を漂わせるジェレミー・アーバイン。ふたりのケミストリーもせつない初恋にぴったりで、思わず乙女心がときめいてしまうほど。
テッサが化学療法を拒否しているために、彼女の時間が限られていることを忘れかけてしまうけれども、もちろん別れはやってくる。人生は“今”を輝かせることの連続というテッサが見つけた答がポエティックに描かれるラストには、瞼が腫れ上がるほどに涙は溢れるものの、あざとく泣かされた感はゼロ。親子の絆にも号泣させつつ、生きる喜びは誰かを愛し、愛されることにあるのだと、素直に思わせてくれる傑作だ。
(杉谷伸子)