「主人公を活躍させようとし過ぎです。」エージェント:ライアン よしさんの映画レビュー(感想・評価)
主人公を活躍させようとし過ぎです。
新人CIA分析官が、ロシアによるテロ攻撃を防ぐために奮闘する物語。
ケヴィン・コスナーが脇を固めるスパイアクション。「レッドオクトーバーを追え」等のジャック・ライアンシリーズの一作です。
作中の時系列的には、一番最初の作品になるのではないでしょうか?
物語は3部構成。ヘリ撃墜の大怪我から、インターンを勤めていた最愛の妻との出会い、そしてCIAからのスカウト迄を描いたイントロダクション。
続いて、経済テロの可能性に気付き、ロシアへ調査に赴いた中盤。
そして最後は、アメリカへ戻ってのクライマックス。
とても整理されていて、観やすい構成になっていたと思います。
ただ、映画としてみると、面白みを感じません。
理由は二つ。
一つ目は、3部構成のバランスの悪さ。中盤のロシア編に重きがおかれ過ぎていて、肝心のクライマックスが尺のうえでも、質のうえでも軽くなってしまっています。
用意周到に練られたテロ攻撃とはいえ、相手は一人。大人数の警官隊の相手としては、余程の工夫がないとバランスが取れないように感じます。
二つ目は、ロシア編のリアリティのなさ。
雪解け時とはいえ、元々仮想敵国のアメリカとロシア。そしてアメリカにテロ攻撃を仕掛けようとしているロシア。そのロシア国内で、CIAが自由自在に動き回るのは、現実的とは思えません。
大規模テロを仕掛けようとする前日に、人妻に入れ込むラスボスも、流石にありえません。
ビルに忍び込む役目をジャックが担うのも無理があり過ぎます。ジャックはラスボスと会食しているのですから、ケヴィン・コスナーが演じる中佐がその役回りを担う方が物語として違和感がありません。会食中のジャックを動かそうとするから、「人妻」の下りも付け足さざるを得ず、物語が破綻するのです。
ジャック・ライアンシリーズは私好みの作品が多いのですが、本作の私的評価はやや厳しめです。