「爺さん、一念発起。」アンコール!! ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
爺さん、一念発起。
ああ、どうしよう(爆)
イーストウッド卿に並ぶ頑固なクソジジイが登場してしまった。
まさかそれがT・スタンプだとは^^;
病弱な妻がコーラスに夢中だと?じゃあ夫は蝶の収集か?(汗)
…なんて恐ろしいことを考えてしまうほど、悪役の印象が強い。
最近鑑賞したものでは、コーラスものと介護ものが多かったが、
それをミックスさせたのが今作。しかもかなりブラックときてる。
笑うに笑えない苦虫を食った表情が似合いすぎるぞ!スタンプ爺。
あぁだけど…。なんでそんなに偏屈なの!?
妻はガンが再発したというのに、あんなに元気で快活じゃないか。
さらには実の息子とも上手くいってないなんて…。
生き辛い性格よね!?…J・アータートンにも言われてたけどさー。
似たのが実家にも一人いるもんだから(爆)全く他人の気がしない。
もし母に先立たれたら、どうするんだ!?としか思えないのだが、
だけど面白いことに、今作の妻V・レッドグレーヴは惚れてるのね。
こんな気難しい男の、どこがそんなにいいの?と思うほどに。
これだから夫婦っていうのは、まったく見当がつかない。
夫婦には、夫婦にしか、分からない絆。みたいなものがあるのだ。
そしてそれは趣味においても、同様のことがいえる。
趣味で出逢った夫婦ならともかく、普通は同じ趣味の方が少ない。
一緒にやればいいのにー♪なんて他人は軽く促すが、
なんで自分が嫌いなことを趣味にしなくちゃいけないんだよ!?と
普通、誰もが思うはずだ。なのでこの夫婦の場合、夫が妻の趣味に
付き合わないのは致し方ない。しかも、あの仏頂面^^;
送り迎えに来ているだけでも、相当妻を気遣ってるのは分かるけど。
何しろ徹頭徹尾、スタンプ爺がひねくれてるもんだから^^;
このジジイ、いつ笑うんだろうなー!?とそればかり考えていた。
一応自身にも飲み友達がいるし、自宅での妻への献身ぶりもさすが。
ある意味この妻も、これだけ面倒を看てくれる夫で良かったはずだ。
何やかやといって、ごく普通のカップル爺婆だったのだな、と。
妻の病が悪化して、ついにコンクール本選に出られなくなった。
妻から手伝うように依頼されていた夫は、嫌々渋々手伝うのだが…。
もう一人、ほとんど主役といっていいのがコーラスの女教師。
J・アータートンがかなりいい味を醸す。この出逢いも彼には大きい。
「年金ズ」なんて(ホントかよ)ふざけたネーミングのこの合唱団は、
歌うのもロック・ポップス・ラップときてる。こういう団体は大好き♪
練習中に倒れたり、怪我したりという団員も多い(何せ高齢者ですから)
この団体を、まだ若い先生がひとりで切り盛りしている。
おかげで同世代の友人はいない、彼氏にもフラれる、なんていう話を
のちにスタンプ爺と交わすところには、かなりグッとくる。
誰もが孤独で寂しい毎日、けれど本音を晒すことで相手も打ち解ける。
やはり殻にこもってちゃ、いけないぞ!?と一念発起する爺さんだが。
妻の逝去にともなって、息子との距離まで遠くなってしまう爺。
可愛い孫娘やお節介な先生の仲立ちもあり、和解しようと試みるが、
やはりここで息子がぶちまける本音は、その通りだよな~と思える。
親ってのは常に身勝手だ。本当に子供を愛しているのなら、どうして
素直に態度に顕わせないんだろう。親から謝ったっていいじゃないか。
減るもんじゃないし(言い方悪い?^^;)、愛情の出し惜しみをするな!
孫娘が(母親がいないけど理由が分からず)あんなに素直でいられるのは
もちろんお父ちゃんやお爺ちゃんに可愛がられているからなんだよね。
そこのところ、爺だって認めているわけなんだから…(まぁ息子もね)
憎み合ってるわけじゃないのに、仲良くできない親子関係ってツライ。
物語は大した起伏があるわけではないが、各々流れる歌にご注目。
妻が生前に夫に捧げた「トゥルー・カラ―ズ」なんて、反則だよ(T_T)と
思うほど泣けてしまったし、他にもS・ワンダー、B・ジョエルを含めて
新旧アーティストの名曲が聴けるのが嬉しい。年金ズの合唱だけど^^;
監督自らの体験談を元に描いたという今作だが、
私も今の年齢になって今作のテーマがハッキリ分かる?ようになった。
(つまり歳をとったんだな。ヴァネッサも歳をとったけど、さすがの名演)