劇場公開日 1980年4月26日

「黒澤渾身の時代劇」影武者 かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0黒澤渾身の時代劇

2025年2月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

原作脚本、黒澤明。
海外版プロデュースにフランシス・コッポラとジョージ・ルーカス。

【ストーリー】
男はコソ泥。
ある夜忍び込んだ先で捕縛され、死刑を待つ身であった。
その折、三河野田城攻めで信玄が銃弾に斃れる。
死のまぎわ、信玄は「我が死を三年かくせ」と言葉を遺した。
息子の信廉は、信玄と瓜二つの男を影武者に立て、遺言を守る。
男は上手くたちまわり、武田の家はどうにか再興の道すじをゆく。
武田家に傾倒してゆく男だが、落馬した際に川中島で上杉謙信よりつけられた傷がないことで、影武者と露見する。

武田信玄には影武者伝説がいくつもありまして、それらを巧みに使って、栄枯盛衰のドラマに仕立てたのがこの『影武者』です。
圧巻なのが、織田の鉄砲隊と武田騎馬軍の衝突。
三段構えの鉄砲隊が、次々と騎馬を粉砕してゆく場面は、画面の迫力も相まって、忘れられぬ切ないシーンになってます。
今の学説によると三段構えの鉄砲隊は、後の世の創作だということになってます。

実際の話に話題を広げますと、影武者というのは本当にいたそうで、大体の武将が使っていたとか。
フィクションのようなドラマチックな使われかたではなく、武将ごとに複数いたとか。
武将と同じ装束で、戦場のあちこちに影武者を配し、
「われこそは軍団の将なり! ここが本隊であるぞ!」
とあからさまにアピールして敵を撹乱したり味方を鼓舞したりしてたそうです。やべえかしこい。

コッポラとルーカスは、昔からクロサワ好きで知られた面々なので、ファン参加枠?(笑)
悲劇の傑作も数おおい黒澤明ですが、スケール感と切なさの同居では、自分はこの『影武者』を推します。

かせさん