劇場公開日 2014年7月25日

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「子供だまし映画はゴメンだぜ」GODZILLA ゴジラ ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0子供だまし映画はゴメンだぜ

2014年8月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

「アメリカ人って、やっぱりヒーロー大好きなんだよね」と思ってしまいます。日本生まれの怪獣「ゴジラ」ですが、アメリカ人にとっての「GODZILLA」のイメージは?
本作では、そのゴジラをヒーローに祭り上げております。
アメリカ人が思い描くヒーローの条件とは? 悪いヤツをやっつける。人間を助ける。正義は勝つのだ~!! とまあ、至って単純明快。
本作での「GODZILLA」は善玉ヒーローで、まるで「水戸黄門」様のような扱いです。そこで登場するのが悪役の怪獣。
悪いヤツはとにかく悪い。
「分かりやすく悪い」
そこんとこが大切ですよ。それがアメリカ流です。この悪者怪獣、放射能を食べて暮らしています。だから「原子力発電所」なんて美味しい”ごちそう”のようなものです。
そこで原発を襲っては、美味しい放射能をチューチュー吸って生き延びています。
実は、ぶっちゃけていうと、本作ではゴジラさんより、この悪玉怪獣の出番の方が多いのです。もう、こっちの方がとっても優秀な悪役キャラで大暴れ。やりたい放題!
で、見ている観客からは、この映画、いつになったら「我らがゴジラさん」が登場するのか? と首を長くして待つ訳です。しかし、じれったいほど出てきませんね。
さて、日本版オリジナルの「ゴジラ」はその誕生の背景に「原爆」「戦争」の恐ろしさ。そして「神の火」と言われた原子力を「コントロールできています」と、あっけらかんと、のたまうようなエラい人達に対して、冷や水をぶっかけるような、強烈な意思と動機がありました。
ゴジラと言う生命体は本来、人間の想像を遥かに超えた存在です。
もちろん、人類にも危害を加えるし、放射能をまきちらす。
こんな摩訶不思議な生命体、見た事ない。
つまり「ゴジラ」と言う存在そのものが、あらゆる意味で「想定外」「ソーテーガイ」そのものなんですね。
「原子力は絶対安全。幾重にも、幾重にも安全に安全を重ねるように施設は作られています」
毎日テレビでCMを流し「安全神話」と言う言葉が作られました。しかし、その「安全神話」は正に「砂のお城」でした。
あの3:11以降「想像を遥かに超える」とか「想定外の」と言う言葉が、うんざり、聞き飽きるほど使われました。なぜそれほど「ソーテーガイ」と言う言葉を使いたがるのか?
「想定外だからシ・カ・タ・ガ・ナ・イ」
「ソーテーガイ、だから俺の責任じゃない」と言いたい人が多くいるのでしょう。
3:11での出来事は、日本と日本人よりも、海外の人々へ、より多くのショックを与えたようです。つまり
「想定外は”必ず起こりえる”」ということです。
本作「GODZILLA」でおきる惨劇は、残念ながら、観客が想像出来る「想定内」に”こじんまり”と収まっているように感じます。
アメリカの映画製作者達が、オリジナル版「ゴジラ」に対して、大変な畏敬の念を持っているのは、よく伝わってくるのです。日本の映画ファンとして「ゴジラ」を大切に思ってくれる事はうれしい事です。であるならば、やはりオリジナル版「ゴジラ」が持つ「神秘性」「人智を超えた生命体」「何をしでかすか分からない」存在として描いてほしかった気がします。
なぜ、ゴジラは正義の味方でなくてはならないんだろう?
ゴジラと言う存在そのものが「人間たちの正義」であり、都合の良い「アメリカの正義」を象徴するものにすり替えたいのか? とさえ思えて来るのです。
今頃、海の底のオフィスで
「俺様はアメリカンヒーローだからな」とソファーとオットマンに足を投げ出し、サングラスに葉巻をくゆらせ、次回作のオファーを待っている「Mr・GODZILLA」氏の姿が目に浮かぶようです。おっとそこへ、ハリウッドのエージェントから電話です。
「なに、次回作? この前みたいな”子供だまし”映画はゴメンだぜ!」

ユキト@アマミヤ