劇場公開日 2013年11月23日

「輝く瞳を失わない姫君の物語」かぐや姫の物語 rakuonjuさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0輝く瞳を失わない姫君の物語

2013年12月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

幸せ

生きることは、つらいこと。

物語の親。平安時代、この物語がどれほど衝撃的で、創作意欲を掻き立てる刺激的なものだったことか。そのことが今ハッキリわかる。

皇子も大臣も帝すらも、真っ直ぐなまなざしのもとに一蹴してしまうヒロインの純粋さ。物語のすべてが、源氏物語すらがここから生まれ、ここから出ようとはしなかった。

生きることは汚れること。罪を作ること。想いは裏切られ諦めばかりを知ること。

でもだからこそ何気ない自然の営みの中に、大きな愛の存在を見付けずにはいられない。

幸せになれるはずだった。きっと。この世界なら。

そんな心の底からの叫びが、希望というものが、決して消えることは無い、それが人間。どんなに清らかな世界に生まれ変われたとしても、この大地の上にしか、心熱くする喜びは無いのだという思いは、きっと消えない。

罪と罰。それは人であろうとするなら、必ず現れる矛盾。「死んでしまいたい」そんな絶望を知ってこそ、生きたいという思いは輝くのだから。

人の手のぬくもりや力を感じさせる画だからこそ、その思いを切に感じる。

「恋しさというものを知らなかったなら、人間には心というものもありはしないだろう。もののあわれというのは、そこから知るのだから。」

四季の移り変わりに、花咲く道に、恋しさと悲しさを思い、真っ直ぐなまなざしで、愛を探すこと。それをもののあわれと言う。

輝夜姫の物語。輝く瞳を失わない物語。いいものを見た。

わがままで臆病な人の瞳というのは、輝きを失わないものだ。それが本当で、素直だからなのかもしれない。

rakuonju