「かぐやかしい生き方とは」かぐや姫の物語 MAPLEさんの映画レビュー(感想・評価)
かぐやかしい生き方とは
CGなしで1コマ何百枚単位で描き上げられた色の重なり合いや線の美しさが素晴らしく、特に竹が蓮の花のように開いて誕生するシーンに目を見張った。日本古来の自然溢れる光景もとても美しい。
外国人の方々にもぜひ見てもらって日本人の作品づくりの精神を伝えたいし、アニメやニンジャやサムライから入った日本文化でも、こういう作品を通して深めて貰えたら良いなと思う。
平安時代に書かれた作者不明のこの話だが、高貴な中年女性ではないかと想像した。「幼き頃、田舎の両親が頑張ったおかげで雅な世界に献上され数十年。籠の鳥のような中で、娯楽といえば月を見ながら想像する事くらい。いくら経っても出自は変わらないし、心求めるまま過ごせていたらどんな人生だっただろうか、本物の愛情を与えてくれる人と結ばれていただろうか。または、目の前の暮らしを謳歌すべく楽しんでいたらどんな人生だっただろうか。他の世界に自由を求め想いを馳せて過ごして数十年が経って、容姿も心も若さも失ってしまった。歳を取らないという月の世界に行けたらどんなにか良いだろう、でも、この世界に必死に入れてくれた両親を想うと心が痛い。」かぐや姫というお話はこんな気持ちが反映されているような気がする。
マイケルジャクソンやホイットニーヒューストンなど数々の成功者も、かぐや姫のような気持ちになった事があるんじゃないかな。物に満たされても、成功するほど真に心を満たしてくれる人は寄って来ず、孤独で満たされない気持ち。
違う世界に憧れたかぐや姫に与えられた月からの罰は、とても的を得ている。育つまでの楽しい時間はタケノコのようにあっという間に過ぎ去り、苦しむ時間が長い。
すてまるにいさん、あなた妻子持ちでしょうと言いたいところだが、彼は作中で、かぐや姫とは対照的に、現実の中を地に足付けて目の前の世界を自覚して生きている存在として登場している。
すてまるにいさんもかぐや姫も、2人して自分の立場を忘れ、スノーマン笑
でも、人間誰しも、違う人生への憧れはある。それでも、憧れを現実にすべく、または自分の生きている世界を受け入れて、心豊かに過ごす事の大切さを教えてくれる作品だと感じた。