「残念」風立ちぬ ゆりさんの映画レビュー(感想・評価)
残念
この作品はいくつかのテーマが折り重なって作られていると思いますが、「夢に生きること」に関しては、カプローニとの対話しかり、仕事に打ち込む主人公の姿を通して上手く観客に提示されていたと思います。しかし、宣材ポスターやメディアを通して大々的に打ち出されていた「生きねば」ということや「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」というテーマに関しては、共感できる描写や要素があまりにも少なく感じました。
震災や恐慌、戦争についてもう少し説明的な表現、もしくは深く掘り下げた内容の描写があれば、あの時代が如何に生きにくい時代であったかが見る側にも鮮明に伝わっくると思いますし、「生きねば」というテーマに色味を持たせることもできたと思います。そうした要素が欠落している事に加え、妻の死についてもオブラートに包むような描写しかできていなかったことが非常に残念でした。ジブリの過去作である「火垂るの墓」は生々しい描写(人の生死、醜さがはっきり描かれている場面)が多いものの、それ故に「生の尊さ」や作品のテーマが受け取りやすいですよね。このような堂々とした「表現・主張」が本作にはなかった…故にテーマも見えにくく、ストーリーに何の盛り上がりも感じられました。
そして、いちばん疑問に感じたのは、「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて」というテーマです。宮崎駿監督はなぜ2人の半生を混ぜ合わせてしまったのでしょうか。混ぜることでより面白味のあるキャラクターやストーリーが生まれると考えたのでしょうか?
個人的にこの「混ぜ合わせ」には何の面白味を感じませんでした。2つの人生を一緒くたにすることに「敬意」も感じられません。堀越氏か堀氏どちらかに絞り、掘り下げることができなかったのか、激しく疑問に感じます。
以上の内容を踏まえると、作り手には申し訳ないですが☆2つです。