「詩のような映画」風立ちぬ きんのじさんの映画レビュー(感想・評価)
詩のような映画
台詞・説明等、余計なことを語らず、削ぎ落とすことによって、詩のように美しく仕上がった映画だと思います。
戦時中に絡む時代背景ですが、戦争の悲惨さ等の表現は他の映画なり本なりによって観客は理解しているものとして最小限に省き、あくまで二郎の生き様・視点を主眼においています。
さらに、映画で進む二郎の時間も数十年と長いですが、その時間の場転時にカプローニと二郎の夢を挟むことによって、無理なく美しく場転に成功しています。
映画の前半は二郎の夢を追う姿、後半はそこに菜穂子との物語が絡み、疾走感と悲恋のせつなさが観る者の心を震わせます。
特に菜穂子の花嫁姿の幽玄さと儚さ、二郎と菜穂子の想いと背景に想いを馳せれば涙無しには観れませんでした。
菜穂子が突然二郎にあなたと言い出すシーンもありますが、言葉で語らず、二郎と菜穂子との帽子のやりとりと紙飛行機のやりとりで、二人の距離を縮める描写は十分だと思います。
そして最後、カプローニとの夢の中で、二郎に別れの言葉を言えなかった菜穂子の最後の言葉、そこからの「ひこうき雲」の曲へと流れるラストは本当に素晴らしかったです。
一応、機械系の仕事に携わっていますが、戦闘機の説明があれで合っているのかどうかは知りません。
ただ、そんなことは抜きにしても、あのアニメーションは手間と労力を惜しみなく割いていることはわかりますし、シーンに手を抜かないことの積み重ねが観る者の真に訴えることに繋がっていると思います。
また、カプローニとの夢のシーンもアニメだからこそ、違和感を感じずに観ること、世界観に入ることが出来たように思います。
だから、この作品は本当にアニメで良かったと思います。
私個人としては、ジブリの作品は正直、千と千尋~以降は嫌いでした。
しかし、決して万人受けではないかもしれませんが、これほどの良質の作品を作ってくれたこと、そして私個人としてこの作品に出会えたことに本当に感謝しています。
この作品で最後になるのかもしれませんが、宮崎監督、本当にありがとうございました。