劇場公開日 2013年7月20日

「僭越ながら、最高傑作です。」風立ちぬ ヘヴンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0僭越ながら、最高傑作です。

2013年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

言葉で理解する前に、とにかく「感じて」欲しい映画です。

登場するのは・・映画史上最高に、一切、自己弁護しない主人公。
むしろ作者は、彼を否定すには格好の材料を映画全編に散りばめています。
言語的な理解能力に富んだ方は、そっちに目が行って酷評に繋がるのかも知れません。しかし、こんな描き方自体、映画史上類を見ないものです。

彼が多くを語らないのに、本来、目には見えないはずの、風や、ざわめき、わくわく感、ドキドキ感、虚無感、絶望、悲しみ・・私には、それらが目に見えたような気になりました。

どうしても、宮崎さんには時代へのメッセージみたいなものが求められて、「生きねば」という言葉を発せられてますが、この映画にあるのは「生きねば」ではありません。
とてつもない悲しみや、救いようのない空虚を突きつけられても、それでも人を生の衝動に駆り立てる、言葉にならない何か。静かな映画の奥底から、そんなものが迫ってきました。

そもそも、世界的名声が確立した72歳の巨匠が、クリエーターとしての人生を全否定するような要素を持った作品に対して、とてつもない労力で、まるで少年のように大好きな飛行機を描き、初めて大人の男女を描き・・その情熱の源を言葉で説明するのは、ご自身でも無理なのではないでしょうか?

未来少年コナンに夢中になったのが、小学生。中学生で、カリオストロ。高校生で、ナウシカ。ラピュタ。。私も40代のいいオッサンになって・・・まさか72歳のご老人から、こんな贈り物を頂くとは思ってませんでした。
誠に僭越ながら、最高傑作です。

ヘヴン