「すばらしい作品でした」風立ちぬ Zeoさんの映画レビュー(感想・評価)
すばらしい作品でした
すばらしい作品だった。全てのカットが美しい。120分という放映時間は短すぎた。その分、この映画は行間に多くのメッセージが語られていた。
即ち、この作品の理解は、行間の理解の深さに強く依存する。換言すると、この映画を批評することは自分の感性を批評することでもあるのだ。とても作りが丁寧なので、その行間を読み取ることは誰にでも可能なのだから。
わたしは、今回キャスティングは大成功であったと感じた。西島秀俊さんと庵野秀明監督のが絡むシーンが沢山ある。庵野さんの代わりに、熟練した俳優や声優が二郎を演じ西島さんとからむシーンを想像してほしい。明らかに世界観が変わってしまうことに気づくはずだ。庵野さんだからこその世界観が在った。
そして、なによりもすばらしかったのが、菜穂子を演じた瀧本美織である。彼女は、その演技力を評価する高畑勳監督の強い推薦によってヒロイン役に抜擢されたことは有名な話である。彼女は、その期待に違わない、いや期待以上の演技を見せた。
わたしが、瀧本美織の真価を観たのは、結婚式のシーンである。ささやかな結婚式を用意してくれた二郎の上司にお礼を言うシーンの美織さんの演技は絶品であった。熟練した声優であれば、感情の高まりをコケティッシュな声色で演技し、感情表現に抑揚を込めるだろう。そして言葉尻で泣くのである。しかし、美織さんは、初めから泣いていた。声を震わせて泣いていたのである。彼女は、演技を超えていた。菜穂子として感謝し、泣き続けていた。残り少ない命を知りつつ感謝する菜穂子がそこにいた。すごい演技だった。
あなたの文章を読み、様々な場面が鳩尾あたりに”ドスンドスン”ストレートに入ってきている。
あ、いかん。
結婚式のシーン.......
帰って、着替えて、また映画館行こうかな。