「話の展開や人物の感情の動きが強引でなければ◎」風立ちぬ トムさんの映画レビュー(感想・評価)
話の展開や人物の感情の動きが強引でなければ◎
あらかじめ、観る予定でまだ観ていない方は先入観入ると思うので読まないことをオヌヌメします。
全体として、ドロドロとした描写はことごとく排し、できるだけ綺麗な部分を描写している印象を受けました。
やっぱり日本を代表するポジションにいるジブリだけあって、「地震」「貧困」「戦争」「不況」など、現代のキーとなるテーマはきちんと押さえてきているなと思いました。
地震で避難する人たちの群像シーンはすごく丁寧に描かれていました。
テーマに関しては、もう一つ、日本のエンジニアにスポットを当てるのは良いなと思いました。
ただ多くの人がエンジニアである主人公の、あの無表情なしゃべり方に違和感を感じたんじゃないかと思う。明らかに置かれている状況と、それに対する主人公の反応に、見ている方としては感情が乗っからない(笑)
「おい、そこでそのリアクションか!」と。
そのくせ駅でヒロインと再会するシーンなど過剰とも感じる久石譲の壮大なオーケストラが流れたり…。エンジニアはとかく無表情なものだし、無表情だからといって薄情ではないという意図が込められていると良い方に解釈することにします(笑)
そう、単に天才エンジニアとして描くのではなく、あまりヒロイック過ぎない姿で描くというのは必要なことなのかも知れないなと。
「真夏の方程式」みたいなイケメン技術者なんていねーだろという(笑)
宮崎アニメって個人的に、ダサい男たちと、無垢な子供の描写は上手いと思うのですが、それ以外の人間を描かせると淡白で面白みに欠けるなぁと思います。
出来事の多さを考えると二時間程度の映画で描写できる内容ではなかったのではないかという気もします。出来事が淡々と過ぎていった感が否めない。主人公と友人技術者との関係、妹の関係など…。その中にあっては、上司の黒川との関係は良く描かれていた様に思う。
堀辰雄の恋愛小説と堀越二郎の偉人伝がモチーフになっていたということだけれど、その二つが上手く噛み合っていたかといわれると疑わしい。エンジニアとしての主人公、ヒロインと主人公、夢追い人としての主人公がぶつ切りで流れていくため、戸惑った人は多いのではないかと。
でも全体としては面白かったです。
結婚式のシーンは感動的でした。あとユンカースの製作所見学のシーンや技術者としての天才ぶりを発揮する主人公のカッコいいシーンは良かったです。