「歳とりぬ。」風立ちぬ ハチコさんの映画レビュー(感想・評価)
歳とりぬ。
今作の予告を通算100回は観たんじゃないかと思う^^;
それくらい、かなり以前から、劇場で流されていた。
直前には例の4分間映像。初めは終映後だったけれど、
それだと客が帰っちゃうもんだから(爆)前にしたみたい。
当時不安になったのは、皆さん御承知の通りで
「だぁ~れが風を見たでしょう…」のあのくだり(爆)
え?この声優(じゃないけどね)でいくの?と思ったのと、
飛行機の機械音が人間の擬声(気になる)だったこと、
これはどちらも、聞けば聞くほど(そこに拘ってしまうほど)
非常に気になって仕方なかったことである。
が、本編。実際に観てみると(予告ではない分)
そこまで気にはならなかった。最大の難所、庵野監督の声も
慣れてくると気にならず。決して巧くも聞き易くもないけれど。
主人公の稀有な性格に合わせ、彼にムリにやらせたんだから、
どちらかというと、気の毒な役回りだったと思う。
その他の俳優が出す声優演技には、ほとんど文句なし。
可も不可もなく普通に過ぎゆく叙情詩のような話の流れは、
なんでわざわざアニメでやったんだろう?と思うほどだった。
宮崎駿も歳をとったんだな、と思う。
ファンタジーといえば、妄想と現実を行き来する主人公の夢
くらいのもので、あとはリアルな時代感に重点を置いている。
堀越二郎と堀辰雄の半生や作品を合わせ、フィクションで
ラブストーリーまで継ぎ足し、その時代がこうだったことを
十二分に観客に見せつけている。
いい話ではあるし、理解もできるが、特に心には残らない。
素晴らしい映像センスと、躍動感あふれる飛行機の疾風感、
まるで今作のために書き下ろされたようなテーマ曲といい、
魅せるための選択に狂いはなく、プロの仕事だなと実感する。
だけど、纏まり過ぎて狂いのない物語には面白さはない。
こちらが感動に震えるようなドキドキ感が感じられなかった。
なんだアレは?と思うような変な生き物(爆)も出てこない。
過去の何作かには、まだそれ(挑戦)が感じられたので、
やはり宮崎駿が人生を振り返り、纏めの段階に入ったかなと。
本人が何をどう考えているのか、私には分からないけれど…
二郎と菜穂子のラブシーンには、ちょっと驚いた。
物語が現実的であれば、ラブシーンまでも現実的(爆)
あまり宮崎作品でこういうのを見たことがなかったことと、
(大変申し訳ないが)この場面を50を過ぎた監督とあの女優が
演じているんだ…なんてことが脳裏をよぎってしまい、
観ているこっちの方がこっ恥ずかしくなってきてしまった。
いやいや、感動場面でした。特に菜穂子のあの選択は…ねぇ。
当時の女性が(男性優位の中で)どう立ち振る舞ったか、
当時の言葉遣いや所作・動作の流れがいかに美しかったか、
今では忘れ去られてしまった美しい日本の姿が堪能できる。
会社ブランド名が先行して、
実際に観た人の感想が紆余曲折を辞さない有名作品と化した
ジブリ作品。良いも悪いも観た人の価値観に因るものだから
それはどっちもアリだろうと思うのだけれど、
観客たちも歳をとってその流れを振り返った時、あ~変わったな
と実感できるのが、映画を観てきたことの醍醐味かもしれない。
(どんな哀しみも乗り越えて強く生きる。人生のテーマだもんね)