「タバコよりワシの感動を返してくれ」風立ちぬ しーらんさんの映画レビュー(感想・評価)
タバコよりワシの感動を返してくれ
誰の同意も得られないけど…終劇すぐの私は、この作品を「君のおかげで何とか人間でいられました。」と書いてある、宮崎駿から自分の妻へ贈ったラブレターのように感じてしまった。涙が止まらず座席を立てずにいる私に「タバコ吸うかね普通(笑)」とパートナーが語りかけ、私の夢は醒めた。ティッシュを投げつけ拾わずに退席、パートナーがなにか言うのを無視して同じ階の共用イスに座りガラス越しの空を眺めていた。その時頭に浮かんだ言葉は「タバコ吸いてぇ」でした(嘘)…空を見ながら、煉獄で二郎を待ち続けた菜穂子が羨ましくもあり、自分にはあの若さはもうないんだと馬鹿なパートナーがやって来るまでの時間で妄想していました。駿さんの奥様とこの映画について少し話してみたくなりました。
菜穂子の命を貰い二郎が完成させた飛行機は「九六式艦上戦闘機」二郎曰く自身会心の作だったとの事です。「風立ちぬ」もやはり宮崎駿監督の会心の作であり、おそらく宮崎駿ベストの完璧な映画です。菜穂子の「生きて」という声に対して、その時々で異なった感想を持つ不思議な映画です。
庵野秀明の幻惑ボイスをディスる野暮な方もいますけど、エヴァQのあと鬱症状が強くなり、会社へ行けなくなった庵野を鈴木Pとパヤオが声のオーディションに強制参加させ、「風立ちぬ」に関わることで心が回復していったという逸話があります。お前らこの逸話でご飯三杯行けない奴はアニメファンじゃねーんだよ。バーカ。という映画です。
話は変わりますが、「九六式艦上戦闘機」の後継機があの「零式艦上戦闘機」であります。ジブリ「風立ちぬ」の後続作品があの「かぐや姫の物語」です。「ゼロ戦」も「かぐや姫」も空前絶後の大傑作ですが、その後の破滅を呼び込んでしまいました。エンジンの脆弱性=日本語使用人口の少なさと思い至ってしまい、気分が暗くなり生きるのが辛い。終わり。