「久しぶりに「風立ちぬ」を見た。 菜穂子が出て来ただけで涙が止まらな...」風立ちぬ ISSIさんの映画レビュー(感想・評価)
久しぶりに「風立ちぬ」を見た。 菜穂子が出て来ただけで涙が止まらな...
久しぶりに「風立ちぬ」を見た。
菜穂子が出て来ただけで涙が止まらない。
この映画は2本が1本になっている。
リアリティーのある飛行機設計と、リアリティーのない菜穂子とのラブロマンス。菜穂子は映画の中でも実在している感じがしない。どちらが主軸だと聞かれたら、主軸なんてそもそも無いのである。
この映画で気付いた特徴が、一度目は決して泣けるシーンではないが、ストーリーを知った2回目以降は号泣してしまうシーンがある。そんな映画は無いのではないかな?
作品は「ゴッドファーザー」の様な描き方である。
ビトーからマイケルにドンを譲るシーンは割愛してある。普通の映画なら有り得ない事である。「風立ちぬ」もストーリー上、大切なシーンはほぼ割愛されている。だからあらすじが言い難い作品である。つまりゴッドファーザーも風立ちぬも、あらすじの中に作品のテーマは無いのである。それが、まとまった簡潔な作品であるが、実は非常に難解で、底の底までの理解は、こちらの知性が問われるのである。
人気は無いが宮崎駿の最高傑作だと思う。
ナウシカでカルチャーショックを受けて、最後の作品が最高傑作だなんて幸せである。
ナゼそんなに僕の心に染み入るのか?
一番は、「菜穂子さんの覚悟」じゃないかと思う。
僕は覚悟のある人間が好きである。
大概の人は、この映画から菜穂子さんが不幸だと読み取る。
それは間違っている。
彼女は、結局、幸せに死んだのである。
この映画で2番目に泣けるのは、軽井沢の泉で二郎に自分の正体を明かすシーンである。もう受け入れたはずの死の覚悟が崩れ、自分の病・運命の不幸を呪うシーンである。
病さえなければ、二郎と幸せな未来が見えてしまったからである。
でもその後は、より覚悟を決めた菜穂子さんがいる。より強く、よりブレのない菜穂子さんがいる。
健康長寿、経済的豊かさが幸せを与えてくれる訳ではない。年収1000万円を超える人のうつ病の割合は多くなるという。
幸せを感じるかどうかは、個人の覚悟(気持ちの持ちよう)である。
人は必ず死ぬ。彼女の覚悟は、病気より強く自分の人生を勝ちきったのである。
菜穂子さんは美しい。心を締め付けられる。