「面白いがフィクション」風立ちぬ WADDさんの映画レビュー(感想・評価)
面白いがフィクション
この映画は、堀越二郎の名を借りて「創作の為に他の全てを犠牲にしてきた宮崎駿の自分語りと弁明の映画」であって、堀越二郎の話でも零戦の話でもない。これら固有名詞との関係は完全なフィクションと言って良い。
それにしても、宮崎駿の才能は物凄いのだが、敗戦による価値観の大転換で180°逆振れした軍国少年が左翼に人生を絡め取られてしまったところは何とも痛い。
劇中、軍部は言葉にならぬ雑音だけを話す「人語ではなく、何を言っているか判らないただの馬鹿」として描かれている。
実際の堀越二郎は、本人の著書でも明らかな様に、零戦の使用者である軍に誠実に敬意を払った上で、美しさにもこだわる工学者として解決に心血を注いだ事が明記されている。そして無茶な要求を解決してゆく事にカタルシスを感じ、彼の「作品」を目にした軍のパイロット達が「大きいが、格好のいい飛行機だ」と喜ぶ場面を心底嬉しげに記している。それは理系脳を理解できない宮崎駿には全く見えなかった(見たくなかった)光景だ。
堀越二郎及び零戦とはほぼ無関係な話としては標準を超えて楽しめるが、あくまて宮崎駿史観で描かれたフィクションである事は理解して観たほうがよい。
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